大手飲料メーカー各社が、使用済みペットボトルを再びペットボトルにするボトルtoボトルの水平リサイクルに取り組む中、全メーカーの目標達成には「ペットボトルだけでリサイクルを考えるのは限界」との結論が導かれた。
キリンホールディングスが各社のボトルtoボトルの目標数値から試算したことによるもの。
PETボトルリサイクル推進機議会の「PETボトルリサイクル年次報告書2022」によると、ボトルtoボトルリサイクル量は11万7600トンで、リサイクル率は20.3%。
キリンの試算によると、全メーカーの目標達成には、約60万トンに上るペットボトル年間販売量の約8割に相当する約48万トンをボトルtoボトルにする必要があるという。
3月27日発表したキリンホールディングスの門脇寛CSV戦略部主幹は「現在主流になっているメカニカルリサイクルの歩留まりを考えると、かなりチャレンジングな目標数値。このまま使用済みペットボトルを原料としたリサイクルに頼り続けると、原料が不足し石油由来の樹脂に戻すといったケースも考えられる」との見方を示す。
この課題解決に向けて、キリンは当面、メカニカルリサイクルを中心にボトルtoボトルに取り組みながら将来を見据えてケミカルリサイクル実用化の検討も進める。
ケミカルリサイクルは化学的再生法と呼ばれ使用済みペットボトルをPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂の分子レベルまで分解する。
一方、現在主流となるメカニカルリサイクルは物理的再生法と呼ばれ、使用済みペットを選別・粉砕したフレーク(薄片)をアルカリ洗浄し高温・真空下にさらして樹脂に染み込んだ汚染物質を吸い出す手法となる。
このため、メカニカルリサイクルの対象となるのは、正しく分別・回収された不純物のない良質な使用済みペットと限定される。
これに対して、ケミカルリサイクルは、繰り返しリサイクルされてメカニカルリサイクルでは完全に再生できない品質劣化の使用済みペットボトルやペット以外のフィルムやシートの素材も対象とする。
「PETボトルリサイクル年次報告書2022」によると、フィルムやシートなどペットボトル以外のPET素材は約129万トンに上り、その多くが焼却して熱回収するサーマルリサイクルに回されている。
この現状に対して「例えば卵パックや食品トレイなどをペットボトルにリサイクルできるような技術の実用化が必要。このようなイノベーションによってPETのリサイクル循環量を増やせれば各社の掲げた目標も達成できるものと考えている」。
キリンの2022年のペットボトルリサイクル樹脂比率は8%。これを大幅に拡大し24年に38%、27年に50%へ引き上げることを目標に掲げる。
27年を見据えた方策として「まずは2027年のケミカルリサイクル実用化を目指して各種検討を進めている」とし現在、卵パックや食品トレイなどの各種PET素材の回収を計画し、最適な解重合技術を模索している。