コーヒー、自家焙煎が急増 一般人と異業種の参入で マシンの生産追いつかない状況

 コーヒー自家焙煎の開業がコロナ禍で急増している。

 巣ごもりで生活者がコーヒーの産地や焙煎・粉砕・抽出技術にこだわり起業する動きと、緊急事態宣言で休業やアルコールの提供禁止を余儀なくされた外食店の参入によるもの。
 焙煎セミナーは盛況で予約が取りづらく、焙煎機は供給がタイトになり入手困難な状況となっている。

 日本最大のコーヒー機器メーカーの富士珈機では、コーヒー機器の生産が追いつかない状況が常態化。
 自家焙煎需要の高まりに加え、コロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻で半導体をはじめとするコーヒー機器の部品の一部が調達困難になっていることが需給逼迫に追い討ちをかけている。

 杉井悠紀東京支店支店長は「個人で自家焙煎ビジネスを始めるのに適した生豆3~5g投入の小型焙煎機で半年強。大型機の全自動になると、電子機器が全て揃うのに最短でも半年、長くて1年かかる」と述べる。
 コーヒー焙煎機の高まる需要については、コロナ禍によって個人で運営する焙煎コーヒー屋では特需が発生したとみている。
 「私が知る限り多くの個人の焙煎コーヒー屋さんは外出制限の影響で“コーヒーが売れて、売れて”という状況となった」と振り返る。

 業務店向けコーヒー機器を手掛けるラッキーコーヒーマシンには問い合わせが急増。「20年から21年にかけてホームページでの焙煎機に関する問い合わせ件数が4倍になった」(ラッキーコーヒーマシン)という。

 30kg焙煎機の納入待ちを余儀なくされて9月に焙煎工場の稼働を予定するのは但馬屋珈琲店(東京都)。
 但馬屋珈琲店を運営するイナバ商事の倉田光敏常務取締役は「焙煎屋が流行っている影響で1年以上待たされ最短で9月になった」と語る。

 起業を志す生活者の急増でコーヒーセミナーは活況を呈している。

 UCCホールディングスは昨年末、UCCグループのコーヒーの総合的な教育機関「UCCコーヒーアカデミー」で自家焙煎を学ぶ人が3年間で約2.5倍になったことを明らかにした。

 UCCコーヒーアカデミーの栄秀文学長は「“おうちコーヒー”とも言える文化が成熟して “もっとおいしいコーヒーを飲みたい”といったこだわりが自家焙煎のトレンドを生み出した」との見方を示す。

 同じく趣味が高じて焙煎を始める動きがみられるとの見方を示すのは前出の富士珈機・杉井支店長で「最近ではIT関連の仕事などで在宅をしている中で近所の焙煎屋さんでコーヒーに興味を持たれたという話を聞くことが増えた。副業で焙煎をしたいと考えられる方も結構いて、コーヒー業界外の方で今後開業をしたいと考えている方が多くいる」と指摘する。

 全日本コーヒー検定委員会(J.C.Q.A)制定のコーヒーインストラクター検定事業の一翼を担う東日本コーヒー商工組合の山下雅彦専務理事も、焙煎を含めたコーヒー全般への一般人の関心の高まりについて言及。

 昨年11月の通常総会で山下専務理事は、検定事業について「コーヒーブームで一般の方の参加が物凄く多くなっているように感じる。講習会後の質疑応答でもプロの方がしないような質問が出ている」と語る。

 一般人のコーヒー探求の強まりは豆商品の好調とも相関関係にあるようだ。 

 小川珈琲(京都府)の小川秀明社長は「豆商品の好調はコーヒーインストラクター3級検定講習会を積極的に主催したことも奏功したと考えている」と述べる。

 自家焙煎業店が増加傾向にあるとの見立てから、日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)では今後、調査結果を発表する。

 昨年10月、取材に応じたSCAJの秋本修治会長(極東ファディ社長)は「(極東ファディの)地元・福岡でも自家焙煎店が増えている。保健所への届け出が要らないため実数は把握できないが、アンケートをとり、おおよその数を出していきたい」との考えを明らかにする。