高校生レストラン・北海道三笠高校に熱視線 ポッカサッポロが新しい共創へ一歩 「白い恋人」の石屋製菓も協力

 高校生レストランで知られる北海道唯一の食物調理科単科校・三笠高校(北海道三笠市)が企業との共創の場として熱視線を浴びる。

 サッポログループのポッカサッポロフード&ビバレッジは、コロナ禍で活躍の場を失った同校の応援を目的に、レモンを使ったレシピコンテストを初開催。
 12月10日と11日の 2日間にかけて最終審査が行われ、10日にはゲスト審査員に元北海道日本ハムファイターズの杉谷拳士さんらポッカサッポロのレモンアンバサダーを招き盛り上げを図ったほか、11日には銘菓「白い恋人」で知られる石屋製菓の協力のもと受賞作の商品化が発表される一幕もあった。

 最終審査は1次審査を通過した11レシピを対象に、プレゼンテーションと試食を通じて行われた。レシピは全てポッカサッポロが提供するレモン商品を何らかの形で使用したものとなる。

講評するポッカサッポロフード&ビバレッジの征矢真一社長と石屋製菓宮の沢工場開発チーム・小泉彰氏(右) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
講評するポッカサッポロフード&ビバレッジの征矢真一社長と石屋製菓宮の沢工場開発チーム・小泉彰氏(右)

 審査を務めたポッカサッポロの征矢真一社長は、生徒の独創的なアイデアに触れ「これからは共創の時代。商品開発も幅広くいろいろな方からお知恵をお借りするのが未来をつくる上で大事なこと。あと続けていくことも大事」と語る。

 石屋製菓の石水創社長も審査を務め「1つ1つの発表にインスピレーションを受けた。レモンがテーマなのにピンク色のクリームのエクレアにするという発想や、レモンゼストとピスタチオを組み合わせるという発想は我々にはない」と評する。

 石水社長は、今回の取り組みが製菓業界や北海道の発展につながりうるとの見方も示す。
 「地元企業と一緒にタッグを組み、生徒がどんどんメディアに取り上げられることで業界は間違いなく発展する。特に北海道は一次産業や食が基幹産業のため、そこを引き上げていくと、業界ひいては北海道の価値向上につながる」と語る。

 三笠高校について「普通の高校と取り組むのとは意味合いが全く異なる」と指摘するのはポッカサッポロ北海道の黒柳伸治社長。

講評する石屋製菓の石水創社長 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
講評する石屋製菓の石水創社長

 「食を専門とする高校で入学を決意したときから自分のビジョンを持たれている。そのような高校生と一緒に取り組める我々は幸せ。当社は北海道発祥のグループの会社のため、北海道の次世代育成について協力できることはやっていきたい」と続ける。

 「キレートレモン」や「ポッカレモン」などのマーケティングを手掛けるポッカサッポロの古林秀彦オールレモン事業部長も「1つのことに打ち込めるのは尊い。中学生の段階で、ご自身の将来をある程度見定めているのが素晴らしく、食にかける情熱に脱帽した」と称賛。

 古林部長は商品開発へのプラス効果も見込む。「今回のプレゼンは我々の財産にもなるし、レモンの可能性が広いことを改めて感じさせてくれた。継続していけば我々の引き出しはどんどん増える」と期待を寄せる。

右から審査員を務めるポッカサッポロ北海道の黒柳伸治社長、三笠高校の藤田博史校長、ポッカサッポロフード&ビバレッジの古林秀彦オールレモン事業部長 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
右から審査員を務めるポッカサッポロ北海道の黒柳伸治社長、三笠高校の藤田博史校長、ポッカサッポロフード&ビバレッジの古林秀彦オールレモン事業部長

 三笠市は北海道のほぼ中央に位置し北海道の石炭と鉄道の発祥の地として知られる。

 1945年、この地に道立高校として開校した三笠高校は一時期1300人を超える生徒が在籍していたが、人口減少や高齢化に伴う労働力不足、若年人口の減少によって2007年には入学者が40人を割り込み存続が危ぶまれる事態となった。

 三笠市は、廃校は市の活性化の大きなマイナス要因になると判断し、市民の合意形成を経て市立高校としての存続を決定。

 新たな高校は北海道の食に着目して食に関連した学科への転換を決める。食のスペシャリストを育成する「食物調理科」一科のみの高校として2012年に再スタートした。

三笠高校 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
三笠高校

 三笠高校を1983年に卒業したポッカサッポロの北村嘉洋執行役員カスタマーリレーション本部本部長は11日最終審査の冒頭挨拶で「三笠市は3つの炭鉱を有し人口は昔7万人だったのが、高校在学時には2万人まで減ってしまった。現在、私は北海道を離れて勤務しているが、2012年以降、三笠高校という名前やみなさんの活躍を見聞きすることが増えて、嬉しさと頼もしさでみなさんに感謝したい」と述べる。

 2018年7月には、国の地方創生拠点整備交付金を活用して三笠高校生レストラン「エソール」がオープンした。

ポッカサッポロフード&ビバレッジの北村嘉洋執行役員カスタマーリレーション本部本部長 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
ポッカサッポロフード&ビバレッジの北村嘉洋執行役員カスタマーリレーション本部本部長

 ここは生徒の研修の場としてクラブ活動で運営。調理部と製菓部の2つの部活動があり、調理部は「まごころきっちん」で食事の提供し、製菓部は「シェリー」で洋生菓子やパンを販売して、ともに経営感覚を身につける場にもなっている。

 全国大会や北海道大会で数々の賞を受賞するなど実績を上げ、教育機関と連携した地域づくりの好例として三笠市にも注目が集まる中、コロナ禍になり20年から活躍の場が失われる状態が続いた。

 三笠高校の藤田博史校長は「土日にレストランを運営しているが、ずっとテイクアウト弁当だけを販売して活動できなかった。9月からイートインできる環境になったが、生徒はいろいろな制限の中でやっている。大会もオンラインになったり中止になったりして、せっかくの成長の機会が削がれている部分があった」と振り返る。

三笠高校生レストラン「エソール」 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
三笠高校生レストラン「エソール」

 このような状況を受け1年以上の準備期間を経て実現したのが今回のレモンを使ったレシピコンテストとなる。

 企画意図について、ポッカサッポロの鶴谷哲司カスタマーリレーション本部コミュニケーション室室長は「地域貢献と次世代育成を目的に、我々の資産を使ったお役立ちを考えると、レモンは大前提だが、レモンだけだと新鮮味に欠けることから、アスリートであるレモンアンバサダーや事業の課題解決につながるメニューで競い合う案を提案した」と説明する。

 コンテストは調理部と製菓部それぞれで実施された。
 8月に説明会を開催し、11月の一次審査は製菓部では石屋製菓とポッカサッポロが担当し全レシピが通過。
 調理部では、元北海道日本ハムファイターズの杉谷拳士さんほか陸上競技の寺田明日香選手と小池祐貴選手のレモンアンバサダーと管理栄養士の廣松千愛さんがオンラインで一次審査。ポッカサッポロオールレモン事業部では、実際に全てレシピを試作して試食しレモンの使用方法についても確認した。

一次審査で、実際に全てレシピを試作して試食しレモンの使用方法についても確認するポッカサッポロオールレモン事業部。 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
一次審査で、実際に全てレシピを試作して試食しレモンの使用方法についても確認するポッカサッポロオールレモン事業部。

 最終審査は、調理部が12月10日、製菓部が翌日の11日に開催された。

 審査にあたっては、50点満点で熱意・プレゼンテーション構成など最大20点まで加点できる方式を採用した。
 50点満点の内訳は調理部では(1)レモンを活かしたおいしさ25点(2)お店で提供できる導入のしやすさ・再現性10点(3)アスリートの課題解決できる健康感15点、製菓部では(1)レモンを活かしたおいしさ25点(2)お店で提供できる導入のしやすさ・再現性10点(3)エンタメ性・こだわり15点となっている。

左奥から審査員を務める陸上競技の寺田明日香選手、小池祐貴選手、元北海道日本ハムファイターズの杉谷拳士さんのレモンアンバサダーと管理栄養士の廣松千愛さん - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
左奥から審査員を務める陸上競技の寺田明日香選手、小池祐貴選手、元北海道日本ハムファイターズの杉谷拳士さんのレモンアンバサダーと管理栄養士の廣松千愛さん

 製菓部の最終審査で石屋製菓賞を受賞し、同社での商品化に選ばれたのは「レモンのまんまるパリブレスト」。石屋製菓の石水社長は「大切なのは作り手の想い。当社でもおいしいから売れるということはない。“なぜこのお菓子を選んだのか”“どういった人に食べてほしいのか”“こだわりは何なのか”の説明を聞きながら食べることで、もっとおいしくなり、そのレシピに対する愛情が食べる側も感じることができる。そこがよかった」と総評する。

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