本州西端に清酒蔵を構える下関酒造は、「獅道38」や「蔵人の自慢酒」など独自色あるブランドを展開、国内のみならず海外での評価も高めている。内田喬智常務は「輸出事業を2018年に開始。売上は順調に伸びており、現地の高級飲食店に採用されることも増えてきた」と手応えを語った。
同社は1923年創業で、来年12月に100周年を迎える。地元で親しまれる晩酌酒「関娘」、下関周辺の海産物と相性抜群な「海響」、とらふぐの焼き鰭のみ使用した「ふくのひれ酒」などの銘柄が人気商品。その成り立ちは、周辺の農家445人が共同出資して立ち上げたという全国でも珍しいもの。
内田常務は「当時、下関は北前船の寄港地で全国各地の日本酒が入ってくる環境にあったが、地元に造り酒屋が1軒もなかった。自分たちで地元の食材に合う当地ならではの酒造りを目指したのが始まり」と説明する。その想いは今でも受け継がれており、「主役はあくまで食事。それを最大限に引き立たせる酒質にこだわっている」。
ちなみに、仕込み水は蔵直下160mに位置する花崗閃緑岩によって清められた中軟水を使用している。水質のバランスが良く、多様な味わい(辛口・旨口など)を表現するのに適しているという。
内田常務が蔵に帰ってきたのは約7年前。蔵人としての酒造りやイギリスへの語学留学を経た後、純米大吟醸の新ブランド「獅道38(シド38)」を立ち上げた。
ネーミングは、獅子となってこれから日本酒の新しい王道を創っていく様子をイメージした。ライチ、チェリーなど果実感あるエレガントで透き通った清純さを感じる香りと、微かなスパイシーさが特長。滑らかな舌触り、絶妙なのど越しも楽しめる。原料米は契約栽培の山田錦100%。精米歩合38%、日本酒度マイナス3.5、アルコール度数16%。価格は5千円(税込、以下同)。
また、純米吟醸酒「蔵人の自慢酒」にも内田常務のこだわりが詰まっている。ライムやレモンの香りが感じられ、鮮烈な複雑性を持ったリッチなコクも印象深い。「LONDON SAKE CHALLENGE」で19~20年度連続で最高位のプラチナ賞を受賞。「アジアのベストレストラン50」で第1位に輝き、ミシュランガイドで三ツ星を獲得したシンガポールのモダン・フレンチレストラン「ODETTE(オデット)」の公式メニューリストにも採用された。原料米は山田錦100%。精米歩合50%、日本酒度マイナス1.5、アルコール度数16%。価格は2千500円。
今後に向けて、内田常務は「日本酒の新しい側面や可能性を引き出していきたい」と展望。「伝統的な魅力を大切にしながらも、自由な発想で飲み方や楽しみ方を広げていきたい」などと話した。