フレスタHD 女性の正社員比率が向上 当たり前に働ける環境づくり 渡辺裕治執行役員に聞く

広島県を中心に岡山県、山口県にスーパー59店舗を展開するフレスタ。このほど、リンクアンドモチベーション社による「ベストモチベーションカンパニー」の大手企業部門で10位に選ばれた。同賞は、企業と従業員の相互理解度を偏差値化した「エンゲージメントスコア」の高い企業に贈られるもの。同社では産休や育休の取りやすい環境を作ることで、特に社員の勤続年数が伸び、15年ほど前は1割に満たなかった女性の正社員比率も現在は3割まで高まった。フレスタホールディングスの渡辺裕治本部長に話を聞いた。

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渡辺裕治執行役員(フレスタホールディングス) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
渡辺裕治執行役員(フレスタホールディングス)

――最近の消費動向について、どのようにとらえていますか。

渡辺 コロナ禍で緊急事態宣言が発令され、飲食店が休業すると小売は売上が5%ほど上がる。その繰り返しがこの2年ほど続いた。その中で、買物の頻度を抑え、1回で買う量を増やすという購買行動に変わり、当社としても1人のお客様に買っていただく点数をどれだけ多くするかということに取り組んできた。来店頻度が下がったため客数は若干減ったが、業績は好調に推移している。足下では飲食店が営業を再開し、イベントや旅行も増えてきたが、コロナ禍前の19年に比べるとプラスになっている。

――宅配ネットスーパー「エブリデイフレスタ」の方はいかがですか。

渡辺 コロナ禍に入った段階で会員数が約1.5倍に増えた。もともと、玄関前に置いて帰るというやり方だったので、非接触という点からも支持され、高いレベルで一定のお客様がついている。

――このたび、リンクアンドモチベーションが選定する「ベストモチベーション・カンパニーアワード」で、大手企業部門の10位に選定されました。ここまでの経緯を教えてください。

渡辺 私自身が人事を15年ほど担当し、会社や組織をいかに良くするかについて長い間考えてきた。だが、「組織がこれだけ良くなりましたよ」というような客観的な指標はなかった。

これまでも、お客様や従業員の満足度調査は何度も行ってきたが、それは今あるものの満足度でしかなく、どこをどう変えたら良いのかということは分かりにくかった。

リンクアンドモチベーションのモチベーションクラウドは満足度だけでなく、期待値も出てくるので、そのカテゴリーを上げれば改善できるだろうという予測が立ち、施策を起こしやすい。長い間、人事に携わってきた者としてメリットを感じたので導入した。

導入してから一番大事だったのは、どこがコミットメントするかということ。「人事がやれと言っているから」ではなく、会社全体で取り組むというメッセージが重要だと考えた。そこで、当社の社長が全社で高い数値を目指そうというメッセージを発信した。するとその数値を利用し、自分の店では何が課題なのかということを各上長が理解するのが当たり前になった。

――働き方も変化していますか。

渡辺 正社員の定着率に関して言えば、2007年は平均勤続年数が男女合わせ8年ぐらいだったが、現在は倍の16年になっている。特に女性の勤続年数が高まった。

これは従業員エンゲージメントに加え、産休・育休が取りやすい制度や環境にもかかわってくることだが、当社ではパートさんを含めると、年間20人ぐらいが産休に入る。パートさんは女性が8割と多く、そこで当たり前に取れるということになれば、定着率も高まる。正社員についても、15年ほど前は女性の正社員比率は8%ほどだったが、今では30%に高まった。

また、以前であれば、野菜や果物をケースで運ぶと重いからと、青果などの部門に女性が入ることはなかった。だが、いざ女性を配置すると、バイヤーがロットを半分に減らして発注するなど、周りの意識が変わる。それが当たり前になり、作業しやすい環境が整った。

本人はやりたくても、変な配慮によってそのチャンスが与えられないということが起こっていた。今では青果に行った女性が教える側となり、その人をキャリアモデルとして目指す次の人も出ている。基本的に女性のいない部門はなくなった。

――小売業界では商品の値上げが続き、店舗間の競争も激しくなっています。こうした中、今後取り組むべきことは。

渡辺 われわれが目指す大きなことは二つある。一つは製造小売。自分たちで作り、自分たちで売ることに価値を置く。もう一つが情報小売。小売業は発注やレジなど、ITと絡む部分が多く、情報化を進め生産性を高めなければ生き残るのは難しいだろう。

当社は2020年に、本部を広島市安佐南区緑井に移し、そこに製造工場も置いた。小売として欲しい商品がすぐに製造できる環境が整い、生産性を高めながら付加価値の高い商品が作れるようになった。

また、一部で農業にも取り組んでいる。4月には「第1回全国ミニトマト選手権」で当社のグループ、広島アグリネットファームの「スイートルビー」が金賞を獲得した。PBとグループ会社の製造品、付加価値のある生鮮品。これらが評価されれば、選ばれる店になる。今年4月にオープンしたアルパーク店(広島市西区)は、その集大成だ。目標を上回り推移しており、製造小売の部分が評価されたと考えている。

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