アフリカの小規模生産者へ広がる支援の輪 UCC・丸紅のタンザニアコーヒー案件に次いでルワンダのマカダミアナッツ案件が始動

 アフリカの小規模生産者への官民連携による支援の輪が広がる。

 官民連携の支援は、農林水産省と国連の専門機関である国際農業開発基金(IFAD: イファッド)が2024年に共同で立ち上げた「民間セクター・小規模生産者連携強化(ELPS:エルプス)」イニシアティブを通じたもの。

 現在、ELPS第一号案件「タンザニアにおける持続可能なコーヒー生産プロジェクト」が進行しており、8月22日、第二号案件「ルワンダにおけるマカデミアナッツのバリューチェーン強化プロジェクト」が発表された。

 ELPSの目的は、生産国にとっては農業の生産性・持続可能性の向上と小規模生産者の増収にあり、日本にとっては輸入の安定確保や輸入相手国の多様化による食料安全保障にある。

前列左からムカシネ・マリー・クレール閣下、アルバロ・ラリオ氏、山本佐和子氏、バラカ・ハラン・ルヴァンダ閣下。後列左からオリビエ・クウィゼーラ氏、小森英哉氏、リック・ヴァン・デル・カンプ氏、窪田修氏、芝谷博司氏、大矢秀史氏
前列左からムカシネ・マリー・クレール閣下、アルバロ・ラリオ氏、山本佐和子氏、バラカ・ハラン・ルヴァンダ閣下。後列左からオリビエ・クウィゼーラ氏、小森英哉氏、リック・ヴァン・デル・カンプ氏、窪田修氏、芝谷博司氏、大矢秀史氏

 ELPSの実施機関であるIFADが、産地への社会貢献を通じてサプライチェーンの強化を図りたい企業と支援を求める世界の小規模生産者の橋渡し役を担う。

 8月22日、横浜市で開催された第9回アフリカ開発会議(TICAD9)のテーマ別イベント「IFAD/農林水産省共催イベント」で挨拶した農林水産省の山本佐和子農林水産大臣政務官は「昨年、食料・農業・農村基本法を制定以来、四半世紀ぶりに改正した。この中で、国内生産では需要を満たせない品目については輸入の安定確保に努め、特に官民連携による輸入相手国の多様化や投資の促進に取り組むことを明記している」と語る。

 一方、輸入相手国、とりわけ小規模生産者は厳しい環境に置かれる。

 IFADによると、世界の食糧生産の3分の1を生産している小規模生産者は、依然として貧困と飢えに苦しみ、異常気象や価格変動などの外的影響を受けやすく、国際市場や融資へのアクセスの確保に苦労しているという。

 IFADのアルバロ・ラリオ総裁は「各公的機関や政府の財政は逼迫しており、世界で安定をもたらす強靭な食料システムを構築するためには民間セクターの皆様から支援をいただくことが重要」と訴える。

 第一号案件には、民間企業としてはUCC上島珈琲と丸紅が参画。
 タンザニア南西部に点在する9つの「AMCOS(アムコス)」と呼ばれる生産者組合(生産世帯1500~2000人)を対象に、約46万ドル(約6600万円)の予算を投じて支援活動を実施し生産量を倍増させる。支援期間は3年間(実質2027年まで)。

 昨年6月の現地調査と同11月のワークショップの開催を経て、今年5月のプロジェクト始動前には、コーヒー栽培に必要な資材やコーヒーノキとシェイドツリーの苗床、コンポストなどを整備して研修を行えるようにした。

 タンザニア連合共和国駐日特命全権大使のバラカ・ハラン・ルヴァンダ閣下は「タンザニアはプロジェクトの成功に完全にコミットしている」と力を込める。

パネルディスカッションで説明するUCC上島珈琲の芝谷博司社長(右)
パネルディスカッションで説明するUCC上島珈琲の芝谷博司社長(右)

 UCCと丸紅は5月と8月に現地を訪問。

 進捗状況について、UCC上島珈琲の芝谷博司社長は「訪問を重ねるにつれ農家の方々との信頼関係が増しているのを実感している。(UCCが)これまでやりたくてもできなかったことや、知りたくても知れなかったことに関して情報を得ることができ、実際に今までやってきた農業からステップアップしていることも実感している」との手応えを得る。

 丸紅の大矢秀史執行役員食料・アグリ部門長も「目標達成に手応えを感じている」と述べる。

 第二号案件は、ルワンダでマカダミアナッツの有機認証による輸出バリューチェーンの構築を目的に定める。

 支援期間は2026年から2年間。民間企業としては、オスティジャパンとルワンダ・ナッツ・カンパニーが参画を表明した。

 灌漑不足と肥料不足を課題とするルワンダの小規模生産者に、競争力があり付加価値の高い有機認証のマカダミアナッツの生産を促していく。

 オスティジャパンの小森英哉社長は、参画理由について「継続可能な農業を小規模な農家と実現していくことが当社の存在目的と全く一致していたため」と説明する。

 ルワンダ・ナッツ・カンパニーでサステナブル農業・認証コーディネーターを務めるオリビエ・クウィゼーラ氏は「小規模農家の所得向上に加え、土壌管理をしっかり行うことで長期的に農地も維持される」と期待を寄せる。

 ルワンダ共和国駐日特命全権大使のムカシネ・マリー・クレール閣下は「我々の国家開発戦略やスマート農業政策と足並みを揃えて、気候変動に対し強靭な農業を構築し、競争力のあるバリューチェーンをつくっていく」と意欲を示す。

 第三号案件はナイジェリアのゴマを計画。

 各案件のシナジーについて、IFADマーケット&バリューチェーンスペシャリストのリック・ヴァン・デル・カンプ氏は「IFADに小規模のチームがあり各案件をコーディネーションしている。各知見はこの小規模チームを介して共有される。例えばUCCさま・丸紅さまのやりとりで得られた情報は事務局に上げられ、そこからルワンダのチームに“上手くいったこと”と“上手くいかなかったこと”が情報共有される。こうしたやりとりが密にできるのがメリット」と語る。

 ELPSでは「できる限り多くの種類の作物、できる限り多くの国や会社に対してオープンなイニシアティブ」を志向。
そのため対象国はアフリカに留まらない。近くバングラデシュでの案件が発表される。

 農林水産省輸出・国際局 国際食料情報特別分析官の窪田修氏は「3号、4号と続けていきたい」と述べる。