味の素AGFの業務用事業の前期(3月期)売上高が過去最高に達した。
コーヒー豆が高騰する中、コーヒー以外(ノンコーヒー)のパウダー製品の導入拡大が寄与した。
販売チャネル・製品カテゴリでは、外食・宿泊業・カップ自販機・ドリンクディスペンサー(給茶機)・マテリアル原料分野の売上が軒並みプラスとなった。
この中で、オフィスを中心に置かれるドリンクディスペンサーは、従業員のエンゲージメント向上を図る企業に対応して著しく伸長した。
取材に応じた藤巻万之ソリューションビジネス部ノンコーヒー開発グループグループ長は「従業員の満足度やエンゲージメントを上げたいと考え、お茶だけでなく高付加価値ドリンクの提供にも関心を示される企業の増加が追い風となった」との見方を示す。
給茶機市場でドリンクの中身にこだわる動きが今ほど活発化していなかったとされる5年ほど前から、同社は品質やバラエティを追求。社員や従業員の様々なニーズに応えて、働きやすい環境に貢献するものとして、給茶機という名称をドリンクディスペンサーへと改め、協力オペレーター会社とともにオフィスに向けて提案している。

提案メニューで一日の長があるのはミルクメニュー。
一般的にドリンクディスペンサーでのミルクメニューの提供は、家庭用のミルクメニューとは異なり相当な技術力を要する。
「パウダー量を減らさないとパウダーが溶けきれず、かといって、量を減らしてしまうと薄い味わいになる」とのジレンマが発生するという。
同社は独自技術でこのジレンマを解消。業務用ブランド「AGFプロフェッショナル」を立ち上げ、かつてお茶が中心だった提供ドリンクメニューの領域を拡大し、22年に「カフェオレ」と「ミルクティー」、23年に「ココア」と「コーンスープ」を発売した。
ミルクメニューを含めた豊富なラインアップも導入拡大のポイントとなっている。

19年に「味噌汁」、24年には、「エナジードリンク」「オレンジジュース」などを取り揃えた。
「昨秋には、難消化性デキストリンを含み“脂肪と糖の吸収を抑える”というヘルスクレームを持つ機能性表示食品の『黒烏龍茶』を発売したところ好調に推移した」と振り返る。
外食では、おいしさと簡便性、経済性を兼ね備えたものとして1L用・2L用の茶系スティックの引き合いが強まったことが業績に貢献した。
「特に大手居酒屋チェーンさまへの、『烏龍茶華味2L用』など茶系スティックの売上が拡大した。大容量ペットボトルのお茶と比べて、省スペースで済み、コストも抑えられる。水に溶かすだけでつくれるため人手不足のお悩みにも対応してご好評をいただいている」との手応えを得る。

果汁高騰へのソリューションとしての成長の可能性も浮上。
「さわやかりんご」「きりっとオレンジ」「とろけるマンゴー」がホテル朝食バイキングのドリンクメニュー需要を開拓している。
これらの製品は、果実由来の香りの成分を抽出しアロマカプセルに閉じ込め、ほどよい甘みの果糖を使用することで、新鮮な果汁感を再現したもの。独自のフレッシュフルーツエンハンス技術を用いている。
マテリアル原料の販売先は、大手清涼飲料メーカーのほか菓子・食品メーカーなど多岐にわたり「コーヒー豆などの輸入原料の代替として、濃縮コーヒーやインスタントコーヒーがマテリアル原料として伸びている。ドリンクの原料に留まらず、デザートやお菓子、クリームの原料などドリンク以外の採用も増えてきている」と述べる。

![]() |
![]() |