伊藤園の「TULLY’S COFFEE(タリーズコーヒー)」ブランドは、主力の「BARISTA’S(バリスタズ)」シリーズのボトル缶3品「ブラック」「無糖ラテ」「ブラック キリマンジャロ」(キリマンジャロ)を軸足に新商品を投入してブランドを成長させる。
春夏の最注力アイテムは、近年著しい伸びをみせている「キリマンジャロ」。既存品の285mlボトル缶に加えて、大容量の390mlボトル缶を3月10日に新発売してラインアップを拡充。
相澤治マーケティング本部コーヒーブランドグループブランドマネジャーは「『キリマンジャロ』は調子が良く市場に定着しつつあるため、ガラッと変えたりするのではなく、より販路やお客様を広げる方向に強化する。そのため、『ブラック』と同じサイズを新発売する」と語る。
ラインアップの拡充に合わせ、「キリマンジャロ」を前面に押し出したコミュニケーションを計画。交通広告などのリアルの広告と、SNSなどのデジタル広告を組み合わせて、昨年のリニューアル時と同様に大規模な展開を予定している。
「コーヒーの味を楽しむ、ブラックコーヒーユーザーの方に訴求していく。『キリマンください。』のコピーは、日本人の認知度の高いキリマンジャロという品種をシンプルにお伝えできて好評だったため、変えずに続ける」との考えを明らかにする。

「キリマンジャロと言えばタリーズ、と思っていただきたい」との考えの下、「タリーズ」ブランドの嗜好品でもキリマンジャロコーヒーを訴求する。
同時に、昨年の夏場に好評だった水出しコーヒーバッグ「TULLY’S COFFEE BARISTA’S ROAST 水出しコーヒーバッグ キリマンジャロブレンド」を販売開始し、水出しコーヒーでもドリンクでもキリマンジャロコーヒーが楽しめることをアピールする。
「キリマンジャロ」を冠する商品は、紙パック・粉・ドリップバッグでも取り揃え、幅広いニーズに応える。
特に大きな期待を寄せる1L紙パック「MY HOME BLACK キリマンジャロ」は、比較的高単価帯でありながら昨年も好調に推移した。
「ボトル缶はパーソナルユースだが、紙パックはホームユースで、異なる需要をとらえている。さらに、紙パック入りのコーヒー市場で、キャップ付きの商品や高価格帯のものがより伸びている。夏だけでなく、年間を通しての需要も見込める」と述べる。
ブランド全体のファンづくりでは、グループ会社のタリーズコーヒージャパンとの連携を継続する。
両社は2社間での連携をこれまで以上に強化し、共同で原料調達やマーケティングを行っているほか、伊藤園グループ内で人事交流を活発化している。
「春に、タリーズコーヒージャパンと協力して作り上げた新商品を発売する予定。タリーズコーヒージャパンとの連携を深めてアウトプットする活動を引き続き実施していく」と胸を張る。
初夏から秋にかけては、新市場の創出にも取り組む。
「『バリスタズ』シリーズとは異なる、新たな価値をお客様にしっかりと届けていきたい」と意欲をのぞかせる。
今後のコーヒー飲料市場については、厳しい環境を予想。
「原料の高騰によって、価格訴求が難しくなると、市場全体はあまり伸びないと考えられる。ただし、嗜好品として愛飲されている方はずっとコーヒーを飲み続けるため、長期的には伸びていくのではないか」との見方を示す。
「タリーズコーヒー」ブランド全体では、上期(5-10月)の販売数量は前年同期比14.9%増を記録。今期(4月期)は販売数量・金額ともに過去最高の着地を見込む。
「キリマンジャロ」は昨年3月18日にリニューアル発売し、併せてプロモーションを強化。その結果、昨年5-10月の販売数量は、前年同期比93.1%増と、倍増に近い伸びを見せた。ブラックコーヒーのボトル缶市場が苦しい中、異例の伸長を続けている。
好調の理由には、「タリーズコーヒー」ならではのショップ品質を挙げる。
「ショップクオリティという点で『タリーズコーヒー』ブランドが支持されており、その中で『バリスタズ ブラック』とは違うお客様が『キリマンジャロ』を飲んでくださっている」と分析する。
ブラックコーヒーのユーザー拡大も後押しとなっている。
「飲料全体の無糖化や、レギュラーコーヒーを飲む方の増加による味覚基準の変化によって、ブラックコーヒーの市場全体が広がっている。間口の拡大に合わせ、『キリマンジャロ』のユーザーが増えている」と指摘する。
「キリマンジャロ」は、ブランド全体の若返りにも寄与。
「『キリマンジャロ』はアフリカの豆のため、明るく甘い香りが特長。若年層を中心に味わいが評価されている」とみている。
「バリスタズ」シリーズでは、「無糖ラテ」も好調。採用が広がっているという。
「無糖ラテ」の伸長は、ブラックユーザーの増加に伴っている。
「『無糖ラテ』は、甘さやミルク感の強いラテではなく、ブラックコーヒーに少量のミルクを足した設計。これにより、『ブラック』ユーザーの買い回りもみられる」と述べる。
「ブラック」も堅調な推移を見せており、大手コンビニでの「バリスタズ ブラック」の店頭の回転はコーヒーカテゴリでナンバーワンを維持している。
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