伊藤園、女性にそっと寄り添うお茶を追求 「香りでほっと癒される」中身と主張しないパッケージで生活に彩り ギフトにも好適

 伊藤園は、日本茶・中国茶・紅茶の茶葉専門通販サイト「TEA SHOP ITOEN」を運営している。小売店には卸していない希少茶葉などを含めた伊藤園直営店(現在85店舗)で扱う製品を取り揃えている。

 2013年のサイト開設以降、芳醇な香りや特長のある香りの製品が女性に好まれる傾向がみられ、この流れを加速させるべく2023年には10周年を記念し「irodori(いろどり)」シリーズを立ち上げた。

 「irodori」シリーズは、”女性にそっと寄り添うお茶”を追求している。

 立ち上げにあたっては、働く30‐40代の女性に寄り添うべく女性中心のチームを編成。ディレクターやデザイナーも新たに採用し外注に頼らず、複数の部署と連携して製品企画・原料調達・製品開発・デザイン・販売を全て伊藤園自前で行っている。

 「irodori」の特徴について、チームの中心的役割を担う山中三智子さんは「女性の社会進出が増え、分刻みで時間に追われている方は多く、私自身もその一人。10分程度のブレイクタイムに、お茶の香りでほっと癒され、一息ついていただけることを目指して開発した」と語る。

 製品企画を担当する福田枝美里さんは「会員のお客様にアンケートを実施させていただき、求められているものをイメージしながら製品を企画した。香りを求めるお客様が多く、素材を活かしながら、ほどよい香りのあるお茶の開発を進めている」と述べる。

一番人気は「桃と杏の烏龍茶」

一番人気の「桃と杏の烏龍茶」(左)
一番人気の「桃と杏の烏龍茶」(左)

 「irodori」の製品数は約80品。内訳はリーフ製品が24品(50gと100gタイプ合わせて約40品)、ティーバッグ製品が40品。季節限定のフレーバーもあり、製品数は増減する。
 急須を持たない消費者への贈答需要も見込み、ティーバッグの拡販にも注力している。

 フレーバードティーの一番の売れ筋は「桃と杏の烏龍茶」。
 熟れた桃の甘い香りと、みずみずしく甘酸っぱい杏の香りを思わせるフルーティーな味わいの烏龍茶。果実感を再現するために、ベースとなる烏龍茶の選定にもこだわった製品で、リピーターも多い。

 香りに着目し、新たにフルーツフレーバーとハーブの組み合わせの可能性も探る。
 このほど、果実感あふれる白桃とやさしい味わいのカモミールをブレンドした「白桃カモミールティー」を新発売した。

 「香りのニーズは多様化しており、フルーツの香りひとつとっても、好みはさまざま。香りの方向性に加え、香りの強弱でも好みが分かれ、我々も試行錯誤しながら開発を進めている。今後は、フルーツだけでなくハーブのフレーバード製品もさらに増やしていきたい」と語る。

水彩モチーフでフレーバーを表現

矢部さんが考案した水彩モチーフ
矢部さんが考案した水彩モチーフ

 「irodori」のパッケージは、水彩をモチーフとした柔らかく暖かいデザインを採用している。ECという販売チャネルの特性上、パッケージデザインも購入を促す重要な要素となる。

 メインターゲットの30‐40代女性は、はっきりとしたデザインに押しつけがましさを感じる傾向にあり、それを避けるために選択したという。

 デザインを担当する矢部なな子さんは「溶けるように重なり合って作られる色合いは、お茶の奥深い香りや味わいを表している。抽象的な表現にし、お客様に自由に想像いただけるようにしている」と説明する。

 香りや味わいを色合いでやんわりと表現。
 
 「ミントレモンティー」では「抽出液を茶色で表現し、飲んだときに強く感じたレモンとミントの爽やかさを、色を重ねて表現した」。

「irodori」
「irodori」

 水彩は生き物のようでもあり、その時の水分量や絵の具の分量でかなり見え方が変わり、繊細な作業が求められる。

 パッケージデザインは、製品開発後に考案される。矢部さんが飲んで感じたインスピレーションや葉の形状などから1つのフレーバーにつき数十パターンの水彩モチーフを描く。その中から、チームの声に耳を傾け、選定を進めている。

 「30‐40代女性がやさしさや癒しを感じられる世界観を守るために、デザインを通じてブレずにブランドを表現していくことが私の使命」と力を込める。

 この使命感のもと、包材でもやさしさや癒しを体現。

 「2023年の『irodori』立ち上げ時、ブランディングの一環で、包材や紙袋を全て刷新した。手にしてぬくもりを感じるやさしい風合いを重視して、箱や紙袋は再生紙を使用している。環境面も少し意識しながら、やさしさを守っていきたい」という。

贈答に好適 オリジナルラベルも展開

オリジナルメッセージ
オリジナルメッセージ

 需要喚起や認知拡大に向けては、都内でのポップアップショップによる試飲やサンプリング施策などによって体験の場を少しずつ増やしているものの、ECでは基本、試飲などの体感ができないことから、サイトを魅力あるものにしていくことも求められる。

 「TEA SHOP ITOEN」をコーディングする鶴舞花さんは「サイト上の売場づくりを行っている。お客様を常に意識し、画像の配置や文字サイズをスマホ・PC別に調整している。特集ページでは、途中で離脱されないように、長すぎず簡潔に良さを伝えるように心がけている」と胸を張る。

 オリジナルラベル製品をオーダーできるページも昨年秋に鶴さんが手掛けた特集ページ。

ギフトに好適な紙袋も販売
ギフトに好適な紙袋も販売

 これは、コールセンターに寄せられた法人の声を受けたもので、当初は個別に対応。一般消費者の需要も見込めることから、新たに特集ページを開設した。企業のノベルティや周年記念用などに留まらず、一般消費者の季節の挨拶・プチギフト・内祝などにも対応している。

 フルオーダーとセミオーダーの2つの選択肢を設け、企業ロゴや社名、写真、メッセージなどを入れることもできる。最小注文単位は100個からとなっている。

 山中さんは「まとめて購入し、パーソナルギフトとして配られていることも多い。1000円前後のお茶は、ちょっとしたご挨拶やお礼の際に貰い手も気兼ねなく受け取ってくださるため、今後もカジュアルなギフトとしても強化していく。お配りギフトを意識し、”ほんの気持ちです” “ありがとうございます”というラベルの製品も用意している」と語る。

ギフト用に好適な巾着も販売
ギフト用に好適な巾着も販売

 2023年10月にはeギフトを開始した。

 製品を選択して決済するまでの導線づくりを担当する冨田安希奈さんは、eギフトについて「購入するとURLが発行され、そのURLをLINEなどで送ることができる。遠方の方や住所が分からない方にも気軽にギフトが贈れて、貰い手も気軽に受け取れる。日にちや日時指定もでき、様々なシーンに対応して利用者が増えている」と説明する。

 冨田さんが現在追求しているのはサイトの利便性の向上。

 「いろいろなページを回遊して楽しみながら買い物されるお客様がおられる一方で、購入製品が決まっており、最短距離で決済まで進みたいお客様もおられる。あらゆるお客様に使いやすく感じていただけるように、コールセンターからのフィードバッグを反映させながら日々改善を試みている。今後さらにユーザビリティを向上させたい」と意欲を示す。

 一度登録した会員とのコミュニケーション強化として、メールマガジンを会員にあわせて送付。冨田さんと鶴さんが担当し、興味を持ってもらえるような内容を考案している。

 「開封率も業界平均より高めと思っている。ブランディングに通じるところだが、押しつけの宣伝にならないように、問いかけるような言葉ややさしさを重視している」(山中さん)という。

 公式インスタグラムでもブランディングを重視してアプローチ。インスタグラムのフォロワー数は1万人を突破した。

 今後の取り組みについて山中さんは「特にインセンティブがなくても大量のコメントをくださるお客様が多く、やはりお茶はお客様も愛情を持って接してくださる商材だと感じている。課題は価格以上の価値を提供し、リピートしてくださるお客様をより一層増やせるかにある」と意欲をのぞかせる。

 コールセンターや製品のピッキング、出荷、在庫調整などバックオフィス業務を支えるメンバーとも随時連携し、「フレキシブルに社内で連携をとりながら、運営している。ご注文いただいたお客様に速やかに製品をお届けすること、またより丁寧な梱包を目指し、改良を重ねている」と、住谷公次さんは語る。

 改めて「TEA SHOP ITOEN」の魅力について、全員が口を揃えるのは、製品が消費者の手に渡るところまで一気通貫して対応しユーザビリティを大切にした点。今後、この価値発信に向けた活動強化が予想される。

 なお、取材対象者の所属は以下の通り。
 eコマース営業部
 山中三智子氏/住谷公次氏/福田枝美里氏/矢部なな子氏/冨田安希奈氏/鶴舞花氏

株式会社アピ 植物性素材