大手冷凍食品メーカーは、本格的なおいしさや調理の楽しさをアピールするため、生活者向けの体験イベントや店頭の試食販売を活発に展開している。味の素冷凍食品は新しくなった「ギョーザ」の焼き体験を継続的に実施し、テーブルマークは最需要期に「カトキチさぬきうどん」の試食を大々的に提供して盛り上げる。
スーパーなどでの試食イベントは、コロナ禍で自粛を余儀なくされ、昨23年前半は様子見のところもあったが、現在は正常化して積極的に行われている。冷凍食品業界では「実際に食べておいしさに納得していただくことが重要」(メーカー販促担当)との意識が強い。近年は大手メディアでも取り上げられる機会が増え品質向上の認知は高まったものの、手作りや総菜の代替でまだまだ需要開拓の余地があるとみる。
インテージSRI+データによる24年4~9月の家庭用冷凍調理品市場(凍菜など除く)は販売金額ベースで前年同期比1.9%増だった。同社市場アナリストの木地利光氏は「(前年を上回っているが)値上げの影響を考慮すると販売数量は伸び悩んでいる」と分析。各メーカーは価値訴求を通じて短期的・長期的にファンづくりを加速させたい考えだ。
味の素冷凍食品は、24年春のリニューアルで「史上最高キレイに焼ける」ようになった「ギョーザ」の“焼き体験”を積極的に展開。4~5月には東京・JR両国駅で期間限定店「超ギョーザステーション」をオープンし、来場者が自ら焼くスタイルで提供した。同所でのリアル開催は5年ぶり。今年も参加した「東京ラーメンフェスタ」では10月24~27日、初めてギョーザ焼き体験のブースを設置、多くの来場者で賑わった。同社は「フライパンをひっくり返して円盤型のギョーザがキレイに焼けると誰もが笑顔で喜んでいただける。そのような体験の機会をもっと増やしていきたい」。
テーブルマークは今春夏、「ごっつ旨い お好み焼」シリーズを対象に過去最大規模(スーパー約1000店舗)で試食販売を実施し盛り上げた。秋冬シーズンは発売50周年を機にリブランディングした「カトキチさぬきうどん」の提案に注力。「ふるまいうどん」をテーマに、スポーツの大会や子ども向けのイベントに参加して試食を提供するほか、11月以降は店頭でも試食販売を積極的に実施する。「今回のリニューアルでコシの強さはそのままに、もちもち感をアップさせた。新しいおいしさをたくさんの方に体感してほしい」(同社)。
マルハニチロは「新中華街」ブランドでワンランク上の新シリーズを立ち上げ、24年秋から「赤坂璃宮の餃子」と「赤坂璃宮の五目シュウマイ」の2品を本格的に展開。具材の食べ応え、上質な味わいなどにこだわった逸品だ。市場で手薄な中価格帯の商品に位置付け、スーパーなどで試食販売も積極的に行う。同社は「おいしさを実感していただくことが重要。店頭での動きは良い」と手応えを得ており、新たな需要層を開拓しつつある。