伊藤園は、スーパーなどのお茶の売場で「お~いお茶」の簡便商品に舵を切った。
茶葉(リーフ)商品の露出を抑えてインスタント商品とティーバッグ商品の比率を上げていく。
6月29日、「お~いお茶 氷水出し大茶会」の会場で取材に応じた吉田達也マーケティング本部リーフブランドグループブランドマネジャーは「大茶会や茶育では急須で淹れるお茶を含めリーフと簡便商品の二軸で訴求しているが、営業的な施策では完全に簡便商品にシフトしている。昨年から社内ではティーバッグ、インスタントを大きく広げていこうという機運が醸成されている」と語る。
簡便商品の中でも注力しているのがインスタント商品。インスタント商品は前期(4月期)に金額ベースで12%増を記録した。
好調要因は、インスタントの中で差別化された風味・液色と商品名・パッケージデザインの刷新にある。
「インスタントは抽出したお茶を濃縮・乾燥させているため、かなりの熱が加わる。コーヒーはもともと香りが強いので熱を加えても香りが残るが、お茶のインスタントは香りが飛んでしまうため多くの競合商品には香料が添加されている。当社は香料を一切使用せずに香りを立たせている」と胸を張る。
主力インスタント商品の「さらさらとける お~いお茶抹茶入り緑茶」では、独自技術で抹茶を加え“冷水に3秒で溶ける”を謳う。
「溶けやすさも特徴。スプレードライ製法のインスタントを顕微鏡でみると、シャボン玉のような薄い皮膜になっている。単純に抹茶を混ぜると溶けづらく傷みやすくなるが、当社は独自技術で薄い皮膜の中に抹茶を練りこみ、溶けやすく、鮮やかな緑の水色を実現している」と説明する。
前身の商品名には“とける”の文言が入っていなかった。これを改め、さらにパッケージに暖簾風のアテンションをあしらい“冷水ですぐおいしい”ことを訴求したところ勢いを加速。昨年6月に放映開始した中谷美紀さんを起用したTVCMも販売を後押ししたとみられる。
植木史(ふみ)マーケティング本部リーフブランドグループ商品チームチーフは、今後の展開についてマイボトル需要や汎用性に期待を寄せる。
今年3月、「さらさらとける お~いお茶 抹茶入り緑茶」と「さらさらとける 健康ミネラルむぎ茶」からスティック1本でマイボトルに最適な500mlのお茶が手軽に作れる500ml用スティック7本入りを新発売。
植木チーフは「お茶のインスタントはコーヒーのインスタントと比べて認知率が圧倒的に低く、まだまだ飲まれていない方が多いことから、きっかけが大事。マイボトルコーナーにも置かれるようになれば、面白い展開ができる」との見方を示す。
飲用体験にも重きを置く。
「お~いお茶 氷水出し大茶会」では、「ふるふるボトル」に「さらさら溶ける」シリーズのスティック1本と氷水を入れて、それを軽く振るだけでつくれる体験の場を設けた。
「『ふるふるボトル』の代わりにマグカップでも簡単につくれる」という。
汎用性では、かねてから“NINJAアイス”を提案。バニラアイスに好みの「さらさら溶ける」シリーズをかけると“味変”が楽しめることから“NINJA(忍者)”と名付けられた。
今年から大茶会などのイベント限定で「さらさら溶ける」シリーズのアソート商品「味くらべセット」を販売している。
パッケージ裏面にはアイスに混ぜたときの味変を以下の通りに紹介している。
――インスタント緑茶:抹茶味
――インスタントほうじ茶:ラテ味
――インスタント玄米茶:マロン風味
――インスタント麦茶:ティラミス風味
ティーバッグは前期、「プレミアムティーバッグ」シリーズが牽引して金額ベースで1桁前半のプラスで着地した。
「『プレミアムティーバッグ』は通常の20袋よりも50袋のほうの伸び率が高い。50袋は2桁以上伸びており、ヘビーユーザー化している。インスタントも同じ傾向で、通常の40gよりも80gのほうが売れている。ライトユーザーをどんどん取り込んでいかないといけない」と吉田マネージャーは述べる。