加工メーカーの社長が悩んでいる。「物価高が落ち着いたと、世間に認識されるのは本意でない」。今月も多くの食品が値上げとなり、とても落ち着いたようには見えないが、この言葉の背景には秋の麦価引き下げがある。
▼以前なら主原料の価格変動に商品の値段も連動させていたが、今回は小麦が下がったからといって安易に値下げはできない。砂糖などの副原料も再び値上げ基調となり、物流費も高止まり。来春は再び小麦価格が上がるとの見方も強く、政府の場当たり的なガソリン補助もその頃には終わる予定である。
▼最低賃金が上がっても人が集まらず、賃上げ5%以上要求の話も聞こえてくる。世界情勢も不安定なままだ。そんななか、何とか値上げを進めてきた。苦心して醸成したこの流れを逆流させたくはない。その思いが冒頭の言葉につながる。
▼悩みはまた増えた。大手スーパーやコンビニは一部PBの値下げを実施した。PBの製造も行うメーカーではその構成比が高まり、利益は反比例し減少する。水を差すような近視眼的な値下げに、「もったいないことを」と嘆くしかない。