顧客と共同で試作も 東洋新薬「クイックラボ渋谷」 プロテインなど開発相次ぐ

東洋新薬は「健康と美」をテーマとした総合受託製造企業。業界屈指の技術力でブランドオーナーから受託した健康食品や化粧品などの商品開発に貢献している。昨年2月には都内・半蔵門から渋谷に東京支店を移転し、顧客と共同で処方設計や試作などが可能な「クイックラボ渋谷(QLS)」を開設した。QLS開設後1年の運用状況をリポートする。

東洋新薬は19年に日比谷から移転した半蔵門の東京支店で初めて営業拠点にラボ機能を併設。同社では佐賀県鳥栖市に製造拠点を構えているが、顧客企業の多くは首都圏に所在している。迅速な商品開発を行うためには顧客が足を運びやすい立地に試作品をつくり評価できる拠点を開設する必要があった。

22年に東京支店を渋谷に再移転した際もそのコンセプトは引き継がれた。コロナ禍で営業部門のスタッフを中心にリモートワークが進んだことも、ラボ機能の一層の充実につながった。新たな東京支店では、オフィスのエリアは20人前後が稼働できる程度のスペースに抑え、その分ラボを拡張。QLSのスペースは287㎡を占めており、実にテニスコート1.5面分の広さだ。さらに1千種類以上の原料をストックする保管庫や商談室などを設けた。

QLSで顧客は、東洋新薬のスタッフとともに試作品の色や香り、テクスチャー、包装資材までを自らの目で確かめて評価する。送付されたサンプルでなく対面でのコミュニケーションにより、仕上がりのイメージも容易に共有できるようになった。仕上がりに関するトラブルの減少だけでなく、商談時間が短縮されたことで取引の成約スピードも上がった。ラボでの測定や分析結果も顧客が委託先を選定する上で強い説得力がある。

QLSに常駐するスタッフは、開設当初の3人から現在は7人体制に。商品・処方開発スタッフが6人、包材担当のスタッフが1人で構成されている。製剤の試作のみならず包材担当のスタッフが常駐していることで、包材の種類や材質・形状の選定から印刷での色味の再現性に関する相談にもスピーディーに対応できるようになった。

ラボスケールの流動層造粒機 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
ラボスケールの流動層造粒機

ラボ内は商品開発の様子を撮影することが可能で、顧客の販促支援にも一役買っている。評価試験の結果を社内向け資料として生かす顧客も少なくない。

健康食品では錠剤、顆粒、ハードカプセルなどの試作に対応。ラボスケールの造粒機や打錠機から、崩壊性や摩損度の試験装置などを導入している。

化粧品はクレンジングから洗顔、ローション、シャンプー・トリートメントに至るまであらゆる商品の試作や分析・評価を行える。高性能のマイクロスコープで皮膚を評価した画像や、肌の角質水分量や水分蒸散量、ハリなどのデータもその場で得ることができる。肌画像診断装器「VISIA」による画像解析では、試作品使用後の効果も一目瞭然だ。

同社広報室は「利用率は高まっている。1社当たりの滞在時間は半日ぐらいで、一つの案件に対して複数回にわたって足を運んでいただくことも珍しくない。お客様からは商品開発だけでなく販売にも貢献しているというお声もいただいている」と顧客からの反応を話す。

QLSの責任者は「健康食品の試作では味の設計が大半を占める。現在はプロテインが中心。プロテインは利用者のすそ野が広がっており、それとともに原料やフレーバーの数が増えているので依頼が多い。対面で商談しながら試作するため、レスポンスが早く細かいニュアンスを共有できるのは大きな武器」と強みを語った。