3月期決算の大手メーカー各社の上期業績(4-9月期)が出揃った。価格改定効果や業務用の回復、さらには海外事業の拡大により上位20社の売上高は全社増収を確保したが、原材料費や燃料・資材などのコスト上昇で11社が減益となった。通期見通しも全社が増収を見込む一方、10社が営業減益を予想。下期は前半戦の急激な円安進行の影響も懸念され、値上げ後の消費喚起とコスト対応の舵取りは一層厳しさを増していきそうだ。
売上高、営業利益(事業利益)とも、トップは味の素社。為替換算の影響に加え、調味料・食品、冷凍食品、ヘルスケアなどの各セグメントで増収。原材料などコスト増の影響も受けたが、増収効果によりこれを吸収し、「売上高・事業利益はIFRS導入後、半期ベースで過去最高を達成した」(藤江太郎社長)。
マルハニチロも経営統合以来、上期の過去最高益を更新した。加工食品セグメントは原材料コスト高の影響で減益となったが、円安も追い風に水産資源セグメントの水産商事と海外が牽引。外食・業務用の回復に加え、水産物全般の先高感の環境下、同社調達力へのニーズが高まり成約が進んだことが寄与した。
キッコーマン、日清食品ホールディングス、東洋水産も海外事業が牽引。キッコーマンは国内は減収減益だが、海外事業が拡大。日清食品ホールディングスは国内が堅調、海外が全体を牽引し、上期の売上収益は過去最高を更新した。東洋水産は価格改定効果もあり全セグメントが増収。海外即席麺が牽引し、利益面でも大きく貢献した。
ヤクルト本社も上期の売上高、利益は過去最高を更新。国内は「Yakult(ヤクルト)1000」をはじめとする乳酸菌飲料が好調。海外事業も拡大し、通期の業績予想を上方修正した。
円安による海外事業の貢献に加え、今中間期では、原料価格高騰に伴う販売価格引き上げが進んできた製油・製粉メーカーの増収も目立った。
日清オイリオグループは売上高41%増。昨年来からの急激な油脂コストの上昇に伴う販売価格の段階的引き上げが浸透。国内油脂事業の収益が改善したことに加え、海外事業でのパーム油取引の時価評価益もあり、営業利益は前期比50・2%増の大幅増益を達成した。
製粉関連では、日清製粉グループ本社、ニップン、昭和産業は二ケタ増収。ウクライナ情勢の悪化による影響が懸念された10月期の麦価は政府の緊急措置で据え置きとなったが、円安などの影響は来年4月の麦価に反映される見通し。「食糧インフレとの闘いは23年度も続くだろう」(大手製粉メーカー)と警戒感を示す。
食用油・小麦粉など一次原料の価格改定は進んできたが、逆にそれらを原料とする二次加工品の価格浸透は道半ば。今上期の傾向でも、畜肉、乳業、冷食など国内事業はコスト高を吸収できず減益となった企業が目立つ。
足元では穀物相場はピークから落ち着きを見せ始めているが、下期は前半戦の急激な円安志向が重荷となっており、電気代などのコスト上昇も深刻化している。10月には過去最多の品目数で値上げが行われたが、年明け以降の値上げ発表も相次いでいる。多くの二次加工品メーカーは、顕在化するコスト高を追いかける展開がしばらく続きそうだ。