ダノンジャパンのオーツミルク「Alpro(アルプロ)」が倍増で推移し急拡大している。
「アルプロ」は2020年4月に関東エリアの1都6県を中心に販売開始され、同年10月に全国へ販路を拡大。オーツミルク市場の開拓に成功し現在金額ベースで約7割のシェアを握る。
今年10月には発売開始から2年半を迎えた。
これまでの販売実績について、9月取材に応じたマーケティング部マーケティングマネジャーの福田マルシオ氏は「約2年半、ずっと倍増で成長している。これには新しいユーザーをどんどん取り入れていることと配荷を拡大していることが物凄く貢献している」と振り返る。
店頭導入を広げた上でTVCMを年2回放映し、TVCMで「アルプロ」を知った人が売場を訪れたときに商品が並んでいるのを見かけて手に取るといった広告と店頭展開の連動が図れていることも奏功したという。
販売チャネルは、食品スーパー(SM)と量販店(GMS)がメインで春と秋の棚替えのタイミングで導入を拡大。昨秋からはドラッグストアでも導入が広がりつつある。
店頭では「とにかく知っていただき試していただく活動に専念」。
UCC上島珈琲の家庭用嗜好品とコラボしたオーツミルクラテの提案もその一環で「今まで試したことのない消費者にアプローチするための効率的な1つ手法」と位置付ける。
店頭では、定番棚以外にハンガー什器などを用意して、パン売場やシリアル売場への提案も行いタッチポイントを増やす活動に取り組んでいる。
常温保存が可能で賞味期限は未開封でプレーンタイプが304日、フレーバータイプが365日と長く、この特徴を活かしたケース販売も上々という。
「ECやディスカウントストアでのビジネスも拡大中で、ロイヤルユーザーにケースで買われる機会も拡大している」と述べる。
メインユーザーは、コミュニケーションターゲットとは異なり、豆乳やアーモンドミルクなどを購入する40~50代女性となる。
「ブランドを育てるにあたっては20~30代のアーリーアダプターを中心にコミュニケーションしており、豆乳やアーモンドミルクの購買層と比べてどこが突出しているかというと戦略どおりSNSを活用して海外のトレンドを自ら調べ生活の中に取り入れたりする20~30代だったりする。一方、ボリュームでみると40~50代の主婦層がメインとなる」と説明する。
ユーザーが支持しているポイントとしては食物繊維が豊富に含まれていることが基点となる。
「(世界では)自分のライフスタイルに合致し、おいしくて環境にいいといった健康以外にもさまざまなプラス要素があり総合的に評価される傾向にあるが、日本では健康が第一で具体的なベネフィットまで求める傾向が強い」との見方を示す。
プレーンタイプは「オーツ麦の甘さだけ」と「砂糖不使用」をラインアップし、1杯(250ml)当たりの食物繊維は「オーツ麦の甘さだけ」が3.8g、「砂糖不使用」が3g摂れる設計になっている。
「食物繊維の量はこだわっている部分であり、日本人の平均的な食物繊維の1日分の不足分を補えるように3gを下回らないように設計している。食物繊維をきっかけに試される人が多く、実際に飲まれると食物繊維以外に『アルプロ』に関してはカルシウムやビタミンB2・Dが摂れるということも総合的に評価されている。加えて、おいしさが評価されリピートにつながっている」という。
おいしさは、原料のオーツ麦を糖化させて自然の甘さを引き出す技術によるところが大きい。
「プレーンタイプの中でも糖類ゼロで『砂糖不使用』と表記できる商品を出しているのは『アルプロ』だけで、そこがこだわりのポイント。各メーカーのノウハウの部分だが、オーツ麦の糖類の部分をコントロールすることによって、砂糖不使用で料理にも使いやすい製品を生み出している」と語る。
トライアルからリピートにつながりやすく「プレーンタイプに関しては250mlを試し、そこから1Lを購入し続ける動きが鮮明になっている」。
そのまま飲まれる傾向が強く、ダノンジャパンでは次の成長を見据えてレシピを提案。
4月からインスタグラムや店頭のPOPで余った食材と「アルプロ」を活用してつくる「アルプロでNO!フードロス」を提案している。
課題は飲用経験者の獲得にある。
「定期的に行っている調査で、5月に植物性飲料ユーザー20人を対象にオンラインで調査したところ、オーツミルクを理解しているものの飲むきっかけがない方が多くいることが分かり、まずは試していただける人を増やしていきたい」と意欲をのぞかせる。
その点、初のフレーバータイプとして3月に新発売した「たっぷり食物繊維 オーツミルクティー やさしい紅茶の味わい 」は「今まで獲得できなかったユーザーをトライアルで獲得でき『アルプロ』の成長を押し上げている」。
フレーバータイプの役割は、豆乳で行われているようなプレーンタイプへのリクルートではなく、フレーバー内での買い回りと位置付ける。
「プレーンユーザーはプレーンに対してロイヤルティが高く、フレーバーユーザーはフレーバーのみを飲まれる」との見方を示す。
「オーツミルクティー」の好調を受けて、買い回り促進すべくフレーバー第2弾として10月3日に「食物繊維&鉄分オーツ&カカオ贅沢チョコレートの味わい」を新発売した。
同商品は、食物繊維3gに加えて、カカオ由来の鉄分とポリフェノールも一緒に摂ることができる点が特徴となっている。
フレーバーは今後増加の見通し。「具体的な数を現在精査している。フレーバーユーザーは様々なフレーバーを買い回る傾向にあることからフレーバーを増やすチャンスはまだあると考えている」。
冬場に向けては11月から12月にかけてTVCMの放映を予定している。
なお、日本で販売される「アルプロ」製品は現在、タイにある工場から輸入している。
「当初はベルギーかフランスで製造していたものを輸入していたが、ヨーロッパでも成長していることから、取り合いになる前により近い場所で製造できるように体制を整えた。4月からタイで製造したものを展開している。アジアの中では日本が一番成長していることから日本に製造拠点を設けることも検討する可能性はある」とみている。