田楽といえば江戸甘みそ

夕食にこんにゃくの田楽が出てきて、ふと懐かしく思った。添えられたみそは水飴を用いているのか甘みが強い。40年前の東京の下町では、屋台のおでん屋がおでんに甘いみそを添えていた。

▼十返舎一九の「東海道中膝栗毛」は、弥次さん、喜多さんの珍道中を描くとともに東海道の名所やグルメなども紹介している。いわば東海道のガイドブックでもあった。この中に田楽が度々登場。京都見物の清水坂で豆腐をみそだれで楽しむ様子が描かれている。

▼江戸時代の陶工、尾形乾山の道中記には、御油宿(現愛知県豊川市)で菜飯田楽を名物として看板に掲げる店に入ったという記述がある。菜飯田楽は、乾燥させた大根の葉を炊き込んだ菜飯とみそ田楽の組み合わせで、今は豊橋周辺などで提供されている。

▼みそ田楽に使われた江戸甘みそは今も健在だ。河竹黙阿弥作の「四千両小判梅葉」で、みその味を褒められた燗酒売り(おでん屋)の富蔵は「深川の永代橋にある乳熊(ちくま)までわざわざ買いに行っている」と答える。同店のみそは現在も多くの人に愛されている。