ロッテは、ガーナ共和国(ガーナ)産カカオの収穫量が大きく減少していることを受けて、ガーナのカカオ産地へカカオの苗木約12.5万本を寄贈した。
10月8日にガーナで贈呈式が行われ、ロッテグループの重光昭夫会長、ロッテホールディングスの玉塚元一社長CEO、ロッテの中島英樹社長、ロッテ食品のイ・ヨング事業統括代表、ロッテウェルフードのポール・イーCEOが出席した。
寄贈した苗木は、農協の役割を果たす政府機関「COCOBOD(ココボード)」を通じて生産者に届けられる。
8月30日に公表されたICCO(International cocoa organization)統計によると、ガーナ産カカオ豆の近年の生産数量は以下の通り。
――19/20(2019年10月から20年9月):77.1万トン
――20/21(2020年10月から21年9月):104.7万トン
――21/22(2021年10月から22年9月):68.3万トン
――22/23(2022年10月から23年9月):65.4万トン(見積)
――23/24(2023年10月から24年9月):45.0万トン(予測)
近年、ガーナでは農家の貧困や児童労働、森林破壊などカカオ産業における構造的な課題 が指摘されている。
収穫量の減少については、天候不順や病虫害、カカオの木の高樹齢化、農薬や化学肥料の高騰などが複合的に関連していると考えられる。
カカオの木の高齢化は「明確な定義はないが、一般的に20年以上経過すると生産量が著しく低下し高齢化と捉えられる」(ロッテホールディングス)。
樹齢20年以上が経過すると木が大きく太くなり、栄養や水が分散されることで徐々に実の付きが悪くなるとともに、収穫作業が難化し生産性も悪くなるという。
「実際に現地で農園を見ても、カカオの実の付き方に差がみられた。カカオ腫脹性シュートウイルス病などの病気に罹患した木も見られ、そのような場合には木を切るしか対処法がない」と説明する。
一方で、農業の指導を受けて計画的に植え替えを行っている農家からは「23/24クロップで起きた不作の影響が小さかったというコメントも耳にした」と語る。
ICCOでは、今クロップの24/25 (2024年10月から25年9月)生産量は、前クロップに比べて10~20%程度の回復を見込む。
COCOBODの機能も回復の兆しがみられる。
2022年12月にガーナがデフォルトに陥って以降、依然として資金が潤沢ではない状況が続く中、今クロップから、買い付け価格の60%をトレーダーから先に資金を入れてもらい、カカオ豆を農家から買い上げる方式を取り入れたという。
これにより「買い付け資金(借金)の額が従来に比べて減る見通しのため財務状況は昨年より回復していると考えられる」との見方を示す。
3~5年の中長期の生産見込みについては「EUDR(森林破壊防止規則)の施行により、農地を広げての収量増が期待できないため、農地あたりの収穫量が改善しない限り今後も生産量は増加しないという見方が一般的。ただし、需給バランスによって市場価格が他の作物よりも相対的に高い状況が続けば、生産意欲は向上すると予想される」と指摘する。
ロッテでは、サステナブル調達を通じて安定調達の基盤を引き続き作っていく。今回、農家の生産性改善につなげるため苗木の寄贈に踏み切った。
ロッテのチョコレート事業は、1964年の「ガーナミルクチョコレート」発売以来、ガーナのカカオ生産地からの高品質カカオを調達している。