スイスの業務用全自動コーヒーメーカー「Franke(フランケ)コーヒーシステムズ」を中核に展開している三井倉庫ロジスティクスのコーヒーシステムズ事業は、埼玉県戸田市にある同社所有の巨大機器倉庫内に「戸田テクニカルセンター」を設け、主力拠点として、近年業績を伸ばしている。
同社の起源は大手電機メーカーの物流部門。
ラストマイル配送と呼ばれる配送設置工事を得意としており、そこで培われたシステムやノウハウを強みに、各業界の様々な機器に関するテクニカルサービスのノウハウとロジスティクスを掛け合わせた「テクニカルロジスティクスプラットフォーム」と称するビジネスモデルを展開している。
コンビニや外食チェーンにおいて運搬・設置で実績を積み重ね、現在では店舗で使用する様々な什器・機器の搬入設置やアフターサービスの一元管理にとどまらず、機器関連の消費財の調達から供給までのサプライチェーンのあり方からロジスティクス改革までを提案している。
これにより、例えばコンビニの新規出店の際、コーヒーマシンのみならず 冷蔵ショーケース、陳列棚、エアコン、レジやフライヤー等の什器に至るまで店舗運営に必要な機器を一括して設置することが可能。複数のサプライヤーとの調整を減らし、店舗側はそのリソースを他に向けることができる。
それら多種多様な種類の機器を一手に保管しているのが、同社の戸田事業所となる。
東京港から約35㎞と好立地に所在し、首都圏一円にも配送しやすいハブとしては最適な位置に存在する。
約4,000坪の延べ床面積のある倉庫には、時流の配膳ロボや業務用冷蔵庫から、TVやエアコンなどの家電に至るまで、幅広いアイテムが整然と保管されている。
その一画に「フランケコーヒーマシン」のエリアがある。ここには同社の販売するマシンや部品、洗剤等が保管されており、自社倉庫の為必要性に合わせてスペースの拡張ができ、繁忙期には500台以上のマシンの受け入れが可能となる。
コーヒーマシン出荷の際には、設置先の条件にあわせてワークショップでマシンを1台ずつ点検・調整する必要がある。
業績拡大に伴いワークショップエリアを2021年に拡張。1日最大16台の点検・調整が行えるようになった。
戸田事業所の特徴のひとつである「倉庫エリア」「ワークショップエリア」が同一フロア内で行き来できる利点を生かし「点検から設置、保守、ご要望に応じた撤去、再生整備、再設置というサイクルを効率化した」と取材に応じた奥津忠行コーヒーシステムズ事業部長は語る。
また、「昨今力を入れているのは、特にマシンのリファービッシュに関する業務。撤去されたマシンを再整備し、再度お客様にご活用頂く。SDGsの観点からも、この業務の引き合いは非常に多い」と述べる。
リファービッシュ業務においては、特に衛生的な取り扱いに注意を払っているという。
「コーヒーマシンはミルクやパウダーも使用し水分や熱源があり、管理が行き届かないと害虫の温床になりかねない。撤去したマシンには、撤去する段階から殺虫対策を取り、密封した状態で倉庫に運び込まれる。その後、通常行われる清掃業務に加えて、必要に応じ超音波洗浄器やスチームクリーナーを使用して分解清掃を実施、害虫の発生を防ぐ対応を図っている」と説明する。
ワークショップ区画を壁で完全分離し、防虫トラップを幾重にも手配する徹底ぶりを見せる。
ワークショップには多数の機能を備えており、今回この設備を見学させてもらった。合計8台、1日最大16台を並行して点検できるよう配置された作業テーブルがあり、整備に必要な様々な工具が整列されている。
小型機・大型機の両方に対応できるよう、それぞれの規格に合わせた電源と水道管が手配されており、導線を検証し効率化したという。
また、ワークショップは腰高のアクリル張りとなっており、隣接する来客エリアからも内部を確認することが出来る。「“魅せるワークショップづくり”を行っている」と同社の森田営業ユニット長は語る。
ワークショップと並列した部品庫エリアには2000弱の部品が全てバーコード管理されている。
「スイスのメーカーから輸入した部品は、全て検品の上小分け詰め替え管理している。細かい部品であっても、1点でも欠けると修理が完遂できないため、物流業で培った在庫管理ノウハウを活用し、全国のメンテナンス協力会社様の所有在庫も一元管理ができるようになっている」という。
同社は、源流となるロジスティクスの機能を最大限活用し、事業拡大に合わせた対応を加速している。