キリン、減塩食品の塩味やうま味を増強するスプーン開発 スプーン先端から流れる微弱な電流で効果発揮 明治大学と共同研究

 キリンホールディングスは5月20日、明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科の宮下芳明研究室との共同研究で減塩食品の塩味やうま味を増強する「エレキソルト スプーン」を開発したことを明らかにした。

 これは、減塩食品の塩味を約1.5倍に増強させる独自の電流波形の技術を搭載した食器型デバイス。

 スプーン先端から微弱な電流が食品に流れ、塩味やうま味など、食事の味わいを増強する効果を発揮するもの。食卓で自然に使うことができるよう開発当初から改良を重ね、持ちやすさと耐久性にこだわった設計に仕立てられている。

 スプーンの柄にあるスイッチで電源を入れ好みの強度(4段階)を選択し、通常のスプーンと同様に使用する。

 食べる際は、スプーンの柄の裏側にある電極パネルに手が触れるように持ち、スプーン先端の電極に食べ物が触れるようにすくう。その後、0.5秒ほどかけてゆっくりと口に含むことで、食べ物を介して微弱な電流が流れる。

 電流で食品中の味の成分の動きをコントロールする仕組みは、明治大学で長年研究されてきた「電気味覚」の技術を活用している。

 微弱な電流によって、塩味の基となるナトリウムイオンが舌の上に集められることで、減塩食品でもしっかりと塩味を感じることができる。塩味以外にも、酸味やうま味といった電解質の成分のコントロールが可能となっている。

 一方で、苦味や甘味は「エレキソルト スプーン」でコントロールできない。ただし、お汁粉に塩を加えるとより甘く感じるように、同じ食品の塩味をより感じることで甘味もより強く感じるといった相乗効果は期待できるという。

 スープ・カレー・チャーハン・丼もの・ラーメンなど食事全般に対応する。

キリンホールディングスの佐藤愛ヘルスサイエンス事業本部ヘルスサイエンス事業部新規事業グループ主務 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
キリンホールディングスの佐藤愛ヘルスサイエンス事業本部ヘルスサイエンス事業部新規事業グループ主務

 開発にあたっては、キリンホールディングスの佐藤愛ヘルスサイエンス事業本部ヘルスサイエンス事業部新規事業グループ主務が、大学病院で薄味の食事を辛いと感じる患者を多く見かけたことがきっかけになったという。

 佐藤氏は「日本では高血圧の有病者が多く、減塩・無塩食品市場が拡大している一方で、塩分を控えた食事に不満を抱えている人も多い。この課題を解決し、より食事を楽しんでいただきたいと考え開発した」と振り返る。

 「電気味覚」を研究してきた明治大学の総合数理学部先端メディアサイエンス学科長の宮下芳明教授は「研究成果が社会の役に立つのは死後、という研究者も多いなか、キリンさまが早い段階で我々の研究に目をつけてくださった。強い情熱をもって研究成果を社会に実装するということを一緒にやってくださったことにとても感謝している」と述べる。

 「エレキソルト スプーン」の価格は税込1万9800円。

 予約・抽選販売を5月20日から公式オンラインストアで開始する。
 初回は200台限定。申し込みが多数となった場合、抽選となる。6月からはハンズの一部店舗でも数量限定で販売する。

 なお、「エレキソルト スプーン」は微弱な電波が流れる仕組みのため、キリンはペースメーカーを使用している人などは利用しないよう注意を促している。