2月23日、「徳之島コーヒー生産支援プロジェクト」の一環で鹿児島県・徳之島にて「コーヒーチェリー収穫祭」が開催された。
島民が参加する収穫祭は今回が初となる。
開催には、同プロジェクト参画企業の味の素AGF社が音頭を取った。
「まずは島の人たちが徳之島コーヒーに親しみを持ってもらいたい。収穫祭が開催できるレベルにまで漕ぎつけた徳之島コーヒー生産者会の皆様の頑張りを伝えることで、もっと盛り上げていきたい」と語るのは収穫祭に携わったAGFの手嶋めいさん。
開催場所は、鹿児島県大島郡伊仙町にあるAGF第二実証農場。伊仙町からだけではなく、徳之島町、天城町 の“オール徳之島”から60人以上の島民が参加した。
冒頭、AGFの竹内秀樹社長が挨拶し収穫祭の開催を祝福。収穫体験では、赤い実のコーヒーチェリーと黄色い実のイエローブルボンがそれぞれコンテナ1杯分ずつ収穫された。
収穫体験に留まらず、AGFが予め用意した生豆でコーヒー豆の焙煎が体験できるワークショップも行われた。
「親子の参加が多く、“初めてコーヒーチェリーの収穫体験ができてとても楽しかった”」“うまく焙煎できてよかった”などの感想もいただき、徳之島コーヒーをさらに身近に感じてもらえるイベントになった」と振り返る。
収穫祭を契機に長きにわたり関心を持ち続けてもらう取り組みとして、コーヒーノキに立てかける看板製作も実施した。
「参加者が看板を立てかけたコーヒーノキを定点観測できるように、農場の様子を定期的に発信していくことを今後考えていきたい」と語る。
現在、コーヒー畑が多くある伊仙町には苗木・幼木を含め約1万本 のコーヒーノキがある。コロナ禍で同プロジェクトの進捗が足踏みしたことで収穫量は当初計画には達していないものの、生産者会に新規加入者が現れるなど“コーヒーアイランド“の機運は高まりつつある。
2023年12月には、AGFは丸紅と協力してコロンビアから技師を徳之島に招聘。土壌学の修士号と植物生理学の博士号を持つ農業エンジニアが、2日間にわたり徳之島コーヒー生産者会の農園を巡回して栽培についてアドバイスした。
「自分の畑だけではなくメンバーの畑にも同行してしっかりメモをとりながらアドバイスを受けていた。農業エンジニアからは全般的に、カポックや千年木(センネンボク)などの防風林で対策を講じている点が評価された一方、水やりや土壌の管理が課題とのご指摘をいただいた」という。
防風林は台風対策になりうるが、新規参入者にとって防風林づくりを伴う参入は重荷になるとの見立てから、新規参入の間口を広げるべく「平張りハウス」の実証実験を推し進めている。
「平張りハウス」は、AGFの支援により、23年9月、生産者会副会長の泉さんの農場の一部に新設された。今後、「平張りハウス」への苗木の植樹が予定されている。
2023年度のコーヒー豆の収穫量は、台風などの被害が少なく天候にも恵まれた結果、コーヒー豆の育ちが良く、22年度よりも増加を見込む。
この見立てを受け、今秋をめどに島内中心でテスト販売を計画する。「販売時期は9月か10月頃にを予定しているが、まだ販売場所は定まっていない。当社は加工やパッケージングなどで協力していく」と述べる。
徳之島コーヒー生産支援プロジェクトは、2017年6月に伊仙町役場、徳之島コーヒー生産者会、丸紅、味の素AGFの4者が契約締結し開始した。
丸紅は種の提供や世界の産地の技術情報提供をし、味の素AGFは防風対策の支援や肥料などの提供を行う。
伊仙町役場はそれらの橋渡しやPR活動を行い、徳之島コーヒー生産者会が実際にコーヒーを栽培している。2024年3月現在、徳之島コーヒー生産者会の会員は30人前後にのぼる。
「生産者会の皆様が主体となるプロジェクトで、我々はサポート役でしかない。今回の収穫体験や今後のテスト販売などを通じて機運がさらに醸成され、生産者会の活性化にもつながってほしい」と期待を寄せる。