秋の気配が淡いせいか、書店を訪れて本を探す気が向かない。仕方ないから先週末は本棚から蔵書を引っ張り出した。選んだのは「小説スーパーマーケット」(安土 敏)。かつて業界人必読の書だと教えられた本だ。読み返して驚くのは発表から半世紀を経過しても色褪せないこと。食品小売業の本質はいつの時代でも変わらないのだろうか。
▼お仕事小説は巷に氾濫している。ドラマ化、映画化作品も多い。作品を通じて未知の職業を疑似体験できるのは楽しい。仕事とどう向き合い、成長していくかというヒントも得られる。あるいは異業種への転職希望者にとっても。
▼業界別で多いのは出版社、書店、新聞社もの。次いで公務員で、食品業界を描いた作品はまだ少ない。少なくとも“お仕事小説”の一割は食品業界ものであっておかしくないのだが。
▼件の作品は映画「スーパーの女」で一気に知名度を高めたものだが、業界の若手社員の方と話していても最近はご存じないことが多いのが残念。叶わないだろうが令和版「小説スーパーマーケット」が出版されたらなあと想像してみたりする。