問題の尺度

子どもの頃に読んだ本では、月は地球のすぐそばを回っているように描かれていた。だからエベレストの頂上にでも登れば、かなり月に近づける気がしていた。大人になって、実は地球の直径の30倍も外側を回っていると知ったときには驚いた。最初に示された情報に思考が囚われる「アンカリング効果」である。

▼実態について薄々知りながらも、世間の反応に囚われ「その程度の問題なのだ」とやり過ごしてきたことが、ここにきて蜂の巣をつついたような騒ぎだ。政治家と旧統一教会の関係など、自分のような一般庶民ですら知っていた。故・ジャニー喜多川氏の性加害問題だってそうだ。ビッグモーターの実態を知りながら取引を再開した損保ジャパンの幹部も、問題の尺度を見誤った一人だろう。

▼暗殺犯や海外メディアといった部外者が問題の深刻さを告発しなければ、それらは今も手付かずのままだったのだろうか。

▼「(ジャニー氏の件を)大きな事件として捉えなかった。そういうセンサーを持ち得ているべきだったと思う」(NHK「クローズアップ現代」)。当時のNHK芸能部長の吐露が身につまされる。

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