大ヒットの「生ジョッキ缶」をひっさげて、プレミアムビール市場に乗り込む。アサヒビールの新ブランド「アサヒ食彩」が、7月11日から全国のコンビニで発売される。
21年4月に登場した「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」は、開栓するときめ細かい泡が自然発生し、飲食店の樽生ビールの味わいが楽しめる画期的アイテムとして話題に。需要殺到で品薄の時期が長く続いた。
今回はこの特徴を生かした第2弾。プレミアムカテゴリーのビールを投入する。飲用拡大につながるとみて着目した消費者インサイトが、近年高まるタイムパフォーマンス志向だ。
動画を倍速視聴したり、時短調理のためにミールキットを購入したり。さまざまな生活シーンに浸透する“タイパ”。消費者調査では「ワインやウイスキーは構えて飲むから平日は飲めない」「手間にならない範囲で良い気分になれる演出をしている」などの声も聞かれたという。
「満足感や成果は得ながら、手間や時間は短縮したい。そんな効率化を求めるタイパ意識が消費者トレンドになっている。蓋を開けるだけで手軽にラグジュアリーな気分になれる、新たな高付加価値ビールとして提案する」。
5日に行われた「アサヒ食彩」発表会で、マーケティング本部長の梶浦瑞穂氏=下写真㊧から2人目=が表明した。
「蓋をあけるだけではじまる優雅なひととき。泡と香りで食を彩るビール」がコンセプト。厳選した麦芽とフランス産の希少ホップ「アラミス」を含む5種類のホップを使用し、高い濃度で麦汁を発酵させることで、華やかで豊かな香りと濃厚なコクに仕上げた。

プレミアム路線で出遅れのアサヒ 挽回なるか
10月に第2弾が予定されるビール減税を追い風に、競合各社もプレミアムビールの強化には余念がない。
この領域を切り開いた「ザ・プレミアム・モルツ」(サントリー)を筆頭に、高付加価値マーケティングを追求する「ヱビス」(サッポロビール)、クラフトビール市場をけん引する「スプリングバレー」(キリンビール)など有力ブランドがひしめく。そんななかで大看板「スーパードライ」を背負うアサヒは、プレミアム路線では出遅れていた。
「アサヒ食彩」(340㎖/485㎖缶、度数5.5%)の店頭価格は、一般的なプレミアムビールより10円ほど高い284円(340㎖)前後を想定。ビール減税も加味した価格設定だという。
「お客様はかなり賢く消費されている。あまり重視しない生活必需品は抑える一方、特別な消費は変わらずに続けようとする意識がある。酒税改正も追い風となり、プレミアムビールは今後も伸長を見込んでいる」(ビールマーケティング部 江澤創氏=写真㊧)。
「泡と香りの体験」を訴求する動画の発信、100万本サンプリングなどを展開し、認知拡大と飲用喚起に注力。年内に数十万㌜の出荷を見込む。コンビニ限定での発売だが、売れ行きを見極めながら販売チャネル拡大も検討する考えだ。
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