日本のビールをもっと魅力的なものに――。「個性」と「物語」によるビールの魅力化を目指すサッポロビールでは今年、独自の競争軸を創出するマーケティングに取り組む。
「(コロナ禍などを経て)お客様にとってお酒の意味が変わりつつある。コロナ後を見据え、お客様とお酒との新たな関係を作ることが不可欠だ」。10日の事業方針発表会で、サッポロビールの野瀬裕之社長が認識を明らかにした。
「サッポロ生ビール黒ラベル」「ヱビス」をはじめとした同社ビールの22年販売実績は前年比110%(大瓶換算2千677万ケース)と続伸。20年秋の酒税率引き下げによる「ビール回帰」の流れ継続に加え、多様なブランドを強みとした独自のマーケティングが奏功したとみる。
「当社は150年の歴史のなかで『ヱビス』と『サッポロ』という大きなブランドを先輩方から預かり、お客様に提案し続けてきた。個性と歴史を価値に変え、お客様の生活になくてはならないものであり続ける。これを『ビールの魅力化』と呼んでいる。私どもにしかできないマーケティングを展開していきたい」(野瀬氏)。
常務執行役員マーケティング本部長の佐藤康氏は「黒ラベルとヱビスの成長なしにわれわれのマーケティングは成り立たない。ここを最重点に進める」として、新たな顧客接点戦略とマーケティングアクションで「物語」によるビールの魅力化を進める考えを述べた。
今年の「黒ラベル」では、若年層を中心とした新顧客の開拓にフォーカスする。TVCMではおなじみ「大人エレベーター」シリーズに加え、新たに「丸くなるな、☆星になれ。」を展開。また家庭用・業務用の連動企画として、家でも飲食店でも「黒ラベル」を飲むとポイントがたまり商品が当たるキャンペーンも実施する。さらに、完璧な生ビール体験ができるリアル接点として銀座で展開中の「黒ラベルTHE BAR」を、期間限定で大阪・福岡にも出店する予定だ。
また「ヱビス」では「幸せ、ふくらむ。」を新キャッチフレーズに、新たな広告、リアル接点、商品が一体となった顧客との接点作りを推進する。年末に開業予定の「YEBISU BREWERY TOKYO」では、発祥の地・恵比寿で35年ぶりに醸造を再開。ブランドの歴史に触れながら、新しいビールの楽しみ方を発見できる体験の場となる。新たな高価格帯ラインの商品として、若手醸造家の有友亮太氏が手掛ける「クリエイティブ・ブリュー」も始動。第1弾「ヱビス ニューオリジン」を2月に発売する。
主力2ブランド以外の「ラガービール」「SORACHI1984」「クラシック」でも「個性」と「物語」に磨きをかけ、多様性の強みを生かしたマーケティングに注力。創業時から育種する希少な国産ホップを使った「サッポロ NIPPON HOP」も31日発売の第1弾を皮切りにシリーズ展開し、ビール魅力化につなげる。