静岡県掛川市は、持続可能な荒茶取引(茶業版フェアトレード)環境の整備に向けて動いている。6月に策定した「掛川茶未来創造プロジェクト」(掛川市茶振興計画vol.2)で発表した。茶取引の需給ミスマッチを減らして流通過程の無駄をなくし、農家の収入を高める狙い。関係者によると「反収40万円が一つの数値目標」という。
茶市場や斡旋業者を経由して流通させる際、価格の下落によって農家に十分な収入がもたらされないことがある。今年の茶市場でも、高単価のお茶を生産して収入を高めようとする農家の意向が、安価な茶葉も必要とする茶商のニーズと合致せず、大幅な値崩れが起きた。
掛川市が示した構想は、契約栽培に近いスキームを複数の農家と茶商たちの間で成立させるというもの。
別図の通り、まず始めに茶農家と茶商、農協が連携して生産計画を策定し、適正価格での荒茶取引を成立させる。これを茶業版フェアトレード品として認証し、掛川茶振興協会が認証製品であることを消費者に周知。エシカル消費や選択購入を喚起する。
生産者と茶商の間で、必要な品質と生産量を事前に合意できれば、早期の摘採を控えて芽の成長を待ち、低単価品の収量を増やして収入を確保できる。
掛川市が21年9月に市内の茶農家380件から回答を得たアンケートによれば、茶農家の経営主は70歳以上が39%で、60~69歳が34%。「後継者なし」の農家は80%を超え、策を打たなければ生産量が激減する未来がはっきりと見えている。
茶業界では、最大手の伊藤園が4月に先陣を切って値上げを発表したものの他社の追随はまちまちで、肥料代や電力料金の高騰によるコスト増に対して農家の収入が減っているという話が多く聞かれる。十分な収入を得られないとなれば、農家の後継者探しがますます難航しかねない。掛川市は、より具体的な環境整備のあり方について、農協や茶商たちと検討を進める。