加藤産業の加藤和弥社長は14日、オンラインで開いた決算会見において前期の概況や今後の取り組みについて語った。22年9月期は営業収益が1兆356億円、営業利益が134億円。前年同基準で比較した総売上高の伸び率は3.6%増、営業利益は15.5%増の増収増益だった。今期は営業収益3%増、営業利益2.1%増を見込む。
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【前期の総括】総売上高は期首に公表した予想を若干下回ったが、利益面はクリアし増収増益となった。加藤産業単体が堅調だったことに加え、業務用や酒類の回復が寄与した。海外はロックダウンが厳しく低下したが、そのほかのところで補った。
コロナとの共存という中で、売上は落ち着いてきている。特に感染が収まっている時期の売上が厳しく、想定に届かなかった。物流コストの上昇を懸念していたが、結果的には後ろ倒しになっており、来年の春以降、本格的に上昇するかもしれない。逆に電気代を筆頭としたエネルギーコストの高騰が第4四半期ごろから明確に出ており、今年度はそれなりのインパクトになると思われる。
【市場環境について】昔から川上インフレ、川下デフレという言い方をするが、正確にはグローバルなインフレとドメスティックなデフレと言う方が正しいと思っている。今はグローバルなインフレの影響が強く、それに為替という要素が加わり、コストプッシュインフレが起こっているということなので、需給バランスから言えば日本はまだデフレ体質だと考えられる。
結果として、われわれの業界にとって「グローバルインフレ・ドメスティックデフレ」というものは「川上インフレ・川下デフレ」に置き換わっていくため、なかなか厳しい環境が続くだろう。コストプッシュで価格改定が進んだとしても、賃金を含め上がっていくには需要の方が弱すぎるのが、今の日本のマーケットだという基本認識は変わらない。
【今後の取り組み】今まで取り組んできたことを継続しながらトップラインを伸ばし、売上総利益とコストの改善を地道に続けるのがベースになる。トップラインを伸ばすためのハードルは上がっており、生産性の向上によるコストダウンと、売場提案、価値提案という中で粗利の改善を継続していく。売場提案もようやく自由度が戻ってきた。加えて、アプリなどでのデジタル販促の動きも出ている。売場と連動した新しい提案により、活性化させることが必要だ。
単に価格改定するだけでは、消費意欲は落ちる。このタイミングでこそ価値を訴求し、価格に頼らなくても済む売場作りをしていかなければならない。それができるのは、小売業の売場を深く理解するとともに、メーカーのマーケティングや営業戦略をしっかり理解できる立場にある卸だ。そういう存在であり続けたい。