伊藤忠食品・岡本社長 「消費者起点で差別化」 下期の消費動向に危機感

伊藤忠食品の第2四半期決算は売上高3千260億円(前年比6%増)、営業利益34億2千万円(同29.5%増)の増収増益。行動制限が緩和され外食やコンビニが回復、スーパーの取引拡大もあり全業態でプラスとなった。外食・業務用を中心に低採算取引の改善が進んだことに加え、物流においては実態に合わせた取り組みにより収益性が改善。営業利益は約8億円増加した。商品別では値上げ前の駆け込み需要でビールが大きく伸びたほか、飲料も猛暑により好調だった。コロナ療養者に向けた食品セットの供給という一時的なプラス要因もあり、ギフトを除く各商品部門が伸長した。

決算会見で岡本均社長と河原光男専務は、重点分野の状況や次期中計の考えについて次の通り語った。

【重点3分野(サイネージ、惣菜、物流)の状況について】

河原 デジタルサイネージは小売業での採用が広がり、設置店舗数と台数が増加している。メーカーからの広告出稿依頼もいただいている。

惣菜は新規取引先や採用商品の数が確実に伸びている。人手不足の解消など小売業の課題に対し、問屋ならではの柔軟性を生かした提案を行っている。また、スーパーが冷凍売場を拡大する流れがあり、「凍眠市場」が差別化できる商品として導入される機会が増えた。

物流に関しては業界全体で共通課題に取り組む中、生配販三層それぞれにおいて協業を打診しながら効率化を図っている。

【下期へ向けて】

岡本 価格改定が、われわれの収益力に大きく貢献したということはない。上期の進捗率が高かったのはコロナ禍での巣ごもりが多少残っていたことに加え、行動が緩和され業務用・外食が改善したためだ。

下期は為替の変動やインフレにより、消費者の購買意欲は減退すると考えられる。そのため、上期にできる限り収益拡大を図り、増やせる商売は増やそうと取り組んだ。

下期も同様に低重心経営を徹底する考えだが、コストがどのような形で上がるのか、われわれ自身も燃料費や電気代などを転嫁し切れている状況ではない。中計における消費者起点でのビジネスをメーカーや小売と一緒に進めることで、卸として差別化が図られ、シェアの上昇も期待することができる。

【次期中計の考え】

岡本 生活防衛意識は間違いなく強まるだろうが、われわれが扱うのは食であり、食べなければ生きていけない。限られた中で一番美味しく、喜びが感じられるような食べ方によって、消費者に満足いただく。そこに貢献することが、われわれの商売にとってもプラスになると考える。

同じ観点で言えばフードロスや脱炭素の問題に対し注力することが、われわれ自身の業績に貢献することも多々あるだろう。このように自身の成長エンジンに切り替えることが、中計の骨子形成にもつながるのではないだろうか。