日清製粉グループ本社 瀧原賢二社長 「食糧インフレ」闘いに勝つ 中食・惣菜を成長ドライブに

日清製粉グループ本社の瀧原賢二社長は8月26日に開催した記者懇談会で、6月末の社長就任以来初めて経営方針を示した。

2021年度も原材料などのコストアップに対応してきたが、22年度はウクライナ情勢に起因した穀物や資源相場の急騰などにより、原材料などの大幅なコストアップを想定。この対応を最優先課題と捉え、各事業でその対応を確実に実行する。

現状の経営環境を「小麦をはじめとする食糧インフレや様々なコストアップ(コストインフレ)との闘いとなる」と捉えているが、一方で「日本はアメリカ、カナダ、オーストラリア3か国から調達しており、不安は少ない。私自身も3か国の生産者団体や政府関係者らと長い付き合いがあり、彼らとのコミュニケーションの中では日本を優先してくれるだろうと確信している」と自信をのぞかせている。

小麦価格は3回連続して値上げを実施。8月15日には岸田文雄首相から10月の輸入小麦価格は据え置くように指示されたため、「恐らく10月で終わるだろうと思っていたが、想定より長期戦になると予測している」。当面は食糧インフレとの闘いの中で「なんといっても価格改定をしっかりやる」。

価格改定の考え方として、コストアップ分の価格転嫁と値頃感のある製品販売、付加価値製品の販売、需要低減リスクを推進するが、「需要減退リスクは一定程度あるとみており、価格がいずれ平準化した時に需要減退した部分は戻ってくる」と認識し、「まずは現状の戦いに勝っていく」方針だ。

日清製粉グループの目指す姿の実現に向け、今後は

①事業ポートフォリオ再構築によるグループ成長力の更なる促進
②ステークホルダーとの関係に対する考え方を明確にした経営推進
③ESGを経営方針に取り込み、社会の動きに合わせて実行

――の3項目を掲げており、これらを踏まえて10月末に中期経営計画を発表する。

また同社は2050年にCO2排出量実質ゼロを、30年に13年度比で半減を目標としており、「環境対応は最重要課題と認識」。だが「目標を出せても、今の延長戦上で実行するのは難しく、中計の中でしっかりした方針を打ち出す」考えだ。

今後の事業ポートフォリオのうち、コア事業は国内製粉事業、加工食品事業、酵母事業の3つと考えており、「(競争上意義ある区分で)一定の事業領域においてトップであるか、トップになりうる事業を基準として選択と集中を進める」。

国内製粉事業は国内トップシェア(38.8%)を達成し、国内酵母事業も約50%の圧倒的なシェアを保っている。加工食品でも家庭内小麦粉(シェア67.9%)、パスタ(43.1%)、パスタソース(32.5%)、冷凍パスタ(39.5%)、天ぷら粉(60.1%)、から揚げ粉(60.1%)、お好み焼き粉(43.5%)はトップを保っており、安定した収益につながっている。

「成長ドライブ」として、国内の中食・惣菜事業はコスト競争力の強化とグループの総合力による開発力を背景とした売上拡大を目指し、海外事業は既存拠点においてそれぞれの経営基盤強化に取り組む。