ローソンは、AIを活用した値引きで売り切る力を促進して食品ロス(廃棄ロス)と機会ロスを削減し店舗利益を向上させる。
ローソンのAI・データは、購買実績や店舗実績といったローソンとして保有する情報資産と天気予報などの社外からの情報を組み合わせたものとなる。これにより予測と最適化をロジカルに行い業務の精度向上につなげている。
AI値引きはその取り組み事例の1つとなる。各店舗・各商品別に、それぞれ何円の値引きにすると最終的に利益が最大になるかを計算し推奨していく。
25日発表した石川淳次世代CVS統括部マネジャーは「在庫情報や納品予定、過去の販売実績など膨大なデータに基づき、短時間で最適な値引き推奨を商品ごとに細かく出していく。以前の仕組みでは難しかったが、AIに関する技術的な発展でこうしたことができるようになった」と語る。
これにより、値引き業務が集中していた店長やベテランクルーの負担を軽減し、実施者の思い込みによる不適切な値引きを防止。
「同じおにぎりであっても、値引いたときに売れる商品とそうでない商品があり、商品間の関係もある。実際には1つ1つの商品に対して値引き額を適切に設定していく必要がある」という。
2021年6月に東北6県23店舗でAI値引きを実験したところ、弁当・常温寿司・おにぎり・調理パンなど約60品目(SKU)の該当カテゴリーにおいて、1店舗あたりの廃棄金額は約2.5%削減し、荒利額は約0.6%増加した。
プラスの影響が見込めるとの判断から実験店舗を拡大。今年6月28日から9月下旬にかけて都内162店舗で先行展開している。
拡大に伴い、値引き内容も変更。対象カテゴリーを約60品目から約270品目に拡大し、値引き推奨回数も1日1回から1日4回に増やし新たに2段階値引きも取り入れた。
オペレーションも効率化。値引きシールの印刷は従来、対象商品のバーコードをスキャンする必要があったが、その手間を省き、パソコン(ストコン)で値引きシール印刷画面を開き印刷ボタンを押すだけで値引きシールが印刷されるオペレーションを構築した。
課題は店舗の協力にある。
「オペレーションの執行度、店舗にどれだけ協力いただけるかが大きな課題。値引きの最終決定権はFC店にあり、“なぜこの値引き額になったのか”などきっちりコミュニケーションをとり納得していただく必要がある」と述べる。
23年度(2月期)の全国拡大に向けて精度を高めるため、現在実験中の都内162店舗は、立地・売上・直営店・FC店など様々なパターンの店舗で構成されている。
都内では店員にも着目する。
「東北エリアと比べると都内は若く経験の浅いクルーさんが多く、値引き推奨商品と実際の商品がすぐに一致しない可能性があり、そのようなクルーさんでも実行可能なのかを確認していく」と説明する。
都内の実験店舗では、対象カテゴリーの拡大により1店舗あたりの廃棄額は該当カテゴリーで4%削減、荒利については該当カテゴリーで1%増を見込む。