家庭用チーズ再値上げ コスト増と円安のWパンチ 懸念される消費への影響

家庭用チーズが再値上げされる。雪印メグミルク、六甲バター、明治の大手3社は7月29日までに、プロセスチーズ(PC)を中心とする家庭用チーズの値上げ(価格改定、容量変更など)を発表した。大手各社は今年4月以降、輸入原料チーズ価格の急騰に加え、原材料や包装・資材、エネルギー、物流などのコスト増、原油価格やコンテナ不足などによる輸送運賃の上昇などを受け価格改定したが、その後もコスト増が続いたうえ、「想定外」(メーカー)とされる為替の円安などにより収益改善が進まず、年度内2回目の価格改定となった。

「4月の価格改定ではコスト(の上昇分)を全く吸収できていないところに(その後の)為替の円安や輸入原料チーズ価格の大幅な上昇。想定を超えている」「今後、さらなるコスト増が見込まれる。(再度の)価格転嫁は避けられない」「小手先で(コストを吸収)できるレベルではない。原材料価格、為替、どちらか一つだけでも厳しい。逃げ道もない」(大手メーカー)といったように、4月の価格改定でコスト増を吸収しきれなかったことから、もともと追加的な価格改定は不可避と見られていた。

注目は「どう対応するか」だったが、これについては雪印メグミルクが容量変更中心、六甲バターと明治は価格改定中心と、メーカーによって対応が分かれた形だ。

9月1日からの値上げ(容量変更含む)を発表した雪印メグミルクは、家庭用PC7品とナチュラルチーズ(NC)1品の価格改定、PC22品、NC3品を対象とする容量変更を行う。価格改定品の改定率は3.3~9.1%増、容量変更品の減量率は4.2~11.1%減。店頭価格上昇による消費への影響を抑えるため、容量変更が中心となったものと見られる。

容量変更品の新容量は「スライスチーズ7枚入り」113g(現行126g)、6Pチーズ102g(同108g)、ベビーチーズ46g(同48g)など。

六甲バターは7月28日、家庭用PC51品の価格改定と7品の容量変更を発表した。価格改定品の改定率は約8.2%(同社希望小売価格ベースの加重平均値上げ率)、容量変更品の減量率は10~26.5%となる。価格改定は9月1日から、容量変更は10月1日店頭納品分から順次切り替える。

主要商品の新価格(税別)は「ベビーチーズ」222円(現行204円)、「6Pチーズ(90g)」265円(同250円)、「大きいスライスチーズ7枚入り」405円(同380円)など、容量変更品は「スライスチーズ7枚入り」91g(現行105g)など。

明治は10月1日出荷分から価格改定(15品)、容量変更(1品)、価格改定と容量変更(7品)を実施する。価格改定品の改定率は希望小売価格の9.6~15.5%増、容量変更は7.7%減、価格改定と容量変更は5.3~5.9%の価格改定と、4~11%の容量減となる。

主要商品の新価格・新容量は「明治北海道十勝スライスチーズ7枚入り」が税別価格を400円(現行380円)に引き上げるとともに、内容量を112g(現行126g)に減量。「明治なめらかチーズ6P」は価格を360円(同340円)、容量を96g(同100g)に変更。「明治北海道十勝スマートチーズ」は価格を400円(同365円)に引き上げる。

前回の価格改定後、「見立てていた以上に厳しい4月、5月」「価格を据え置いている商品があり、その影響を一部受けている」「価格改定の影響を見越して計画を組んだが、それに対して『ここまで厳しいか』という印象」(同)など、値上げしたメーカーは想定以上の売上減に見舞われた。

要因はPBや価格を据え置いたメーカーに需要がシフトしたことによるものだったが、今後、PBや低価格品を供給するメーカーの値上げも必至とみられるため、各社の業績やシェア以上に、家庭用チーズ需要、消費そのものへの影響が懸念される状況。「消費者離れ」による需要減につながらないよう、これまで以上の市場活性化策が求められる。

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