精糖業界では7月、昨年来4度目となる出荷価格の引き上げを実施する。業界トップのDM三井製糖ホールディングス傘下の三井製糖・大日本明治製糖は、7月11日から出荷価格を6%、1kg当たり12円引き上げた。日新製糖も7月15日から値上げを実施。各社とも追随の動きをみせている。昨今の急激な円安やエネルギーコストの上昇により原料輸入価格や生産関連コストが上昇しており、値上げにより収益基盤の強化を図る。
昨年は海外粗糖相場の高騰を受け3月、7月、12月と3度の値上げを実施、合計17円出荷価格を引き上げた。今回、12円の値上げが市中卸値に完全に浸透した場合、上白糖で1kg当たり216~217円、グラニュー糖で219~220円となる見通し(東京卸値・日本経済新聞掲載価格)。昨年の値上げ分と合わせて合計29円の値上げとなる。
値上げの背景には急激な円安がある。2021年12月末終値1ドル=116.02円から、直近では138円台まで円安・ドル高が進んだ。砂糖の原料は約6割をオーストラリアなど海外からの輸入に頼るが、円安の進行により原料輸入価格が上昇した。原油価格も高騰を続け、工場や物流などエネルギーコストの負担が増加した。また、原油高によりさとうきびがバイオエタノール生産に向けられるとの思惑が意識され、現在の海外粗糖相場は1ポンド当たり19セント前後の高値近辺で推移している。
今回の値上げにより、コロナ禍で急減した砂糖消費回復への影響が懸念される。まん延防止等重点措置が解除され、行動制限や飲食店の時短営業が解かれたことから観光地や繁華街では人流が回復しつつある。それとともにお土産菓子や外食向けなど業務用(大袋)の出荷が回復傾向を示しており、精糖工業会加盟社の5月出荷量は前年同月より10%増加している。
しかし、砂糖を大量に消費する飲料、製菓・製パンメーカーにとって度重なる値上げの負担は大きい。価格の安い異性化糖や加糖調製品、高甘味度甘味料などに需要がシフトしていく可能性も指摘され、「砂糖一人負け」の状況に拍車がかかりかねない状況だ。食品全般のインフレが進行する中、砂糖消費全体の9割を占める業務用需要の回復が見通せなくなってきている。