イトーヨーカ堂は初の取り組みとして衣食住ワンフロア化によるイトーヨーカドーの大改装に踏み切った。
その先陣を切るのは6日リニューアルオープンしたイトーヨーカドー幕張店(千葉県千葉市)。
2階で販売していた衣類などのライフスタイル商品を1階に集約し、食品・薬品・ライフスタイルの生活必需品をワンフロアで買い回れるようにした。
一方、2階には、LOFT(ロフト)・DAISO(ダイソー)・DECOHOME(デコホーム)・アカチャンホンポなど人気テナントを集結させた。
今回の大改装は、立地ごとで異なる市場環境や生活者の購買行動に合わせてGMS(総合スーパー)ならではの品揃えを強化していく事業構造改革の一環。

幕張店では、これまで手薄であった30‐40代の子育てファミリーをメインターゲットに定めて若返りを図っていく。
大改装にあたり、ターゲット層に何十時間にわたるインタビューを行い浮き彫りになったのは、時短と“失敗したくない”というニーズ。
実際にインタビューした梅津尚宏(うめつたかひろ)執行役員ライフスタイル事業部長は5日の取材会で「同じ30‐40代でも出産を機にライフスタイルが変化してGMSを訪れる機会が増えるというお声をいただいた。20‐40代の女性は忙しく複数のお店には行かず、ただし失敗もしたくはないという。若干の価格差は気にはならないものの、ワンストップで買い物でき後から裏切られない消費が重要とのご意見をいただいた」と説明する。

幕張店の大改装には、コロナ禍の2年間で実行した20店舗弱の改装によって蓄積された知見を活用。
「いろいろな失敗と成功があり、ハイ什器を設置すべきか否か、どこに品揃えをして什器を設置すべきかなど、勝ち筋がある程度見えてきて、それらを幕張店に落とし込んだ」という。
幕張店ではハイ什器を積極的に導入。
大改装前と比べて、イトーヨーカドーの売場面積を31%縮小しつつ、ハイ什器導入によりアイテム数は19%減の6万3000アイテムに留めた。
「ワンストップで買える品揃えの幅を維持し、坪効率で137%改善することを目指している」と述べる。

イトーヨーカドーの売場面積を縮小した分、人気テナントを拡充。くまざわ書店は店舗面積が約2.5倍になり、ゆっくり本が選べるようにベンチや椅子を用意した。
アカチャンホンポには、多様な体験コーナーを新設。品揃えも充実し月齢別ベビーフードコーナーやアレルギー配慮食品のコーナーを設けている。
そのほか1階には菓子専門店のシャトレーゼが新たにオープン。自転車利用者が多い幕張地域の特徴も加味して自転車関連グッズとサービスを強化して「地域1番を目指す」。
時流も捉え、節電をテーマにした売場も展開している。

事業部の垣根を取り払いシーン提案も実現。アウトドア用品売場には、話題のチキンラーメンやレトルトカレー、お菓子なども並ぶ。
「30‐40代の子育てファミリーの集客は食品事業の課題でもあるので食品事業部長と考え方を統一するようにしている。アウトドアと防災コーナーの食品の売場づくりは食品事業部が行っている」と語る。
幕張店の食料品売場は全国のイトーヨーカドー中でトップ5の売上げを誇る。
イトーヨーカドー幕張店の福田秀人店長は「幕張店は食品スーパーと品揃えがいい百貨店が融合したGMS。食品はGMSの中でも松竹梅・大中小を網羅しトップクラスの品揃えで売上げを伸ばし続けている」と胸を張る。

食品の来店客にライフスタイル商品や専門店のよさを伝えきれていなかった点を課題とし「ワンストップでショッピングできる体制を構築した」。
全社共通の取り組みとして、幕張店ではドラッグストアの領域を拡大し値ごろ感も打ち出す。「周辺のドラッグストアの品揃えを全て確認し、どこよりもアイテム数を多くし日常的に買われる商品を35%まで高めて競合に負けない価格を打ち出した」(梅津氏)。
販促面では、30‐40代の子育てファミリーはチラシを見ていないことから、個店インスタグラムを含めたSNSの活用や個店の特集サイトを新設。幕張店のサイトでは新規テナントや改装のポイント、従業員のオススメ、新しい売場などを紹介している。


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