ニチレイフーズ山形工場 個食需要に対応、環境にも配慮の冷食新ライン

新機軸の「冷やし中華」業務用に1食完結型メニューも

ニチレイフーズはコロナ禍で加速したパーソナルユース需要に対応するため、約40億円を投じて山形工場に個食対応型の冷凍食品ラインを新設した。今年で65年目を迎える山形工場は、レトルトカレーやふかひれスープなどの常温食品に加え、新たにパーソナルユース対応の冷凍食品の2温度帯商品を生産する工場に一新。再生可能エネルギーを活用したCO2排出量ゼロの電力や自然冷媒による脱フロン化の推進など、環境対応の取り組みも強化した。社会課題の解決と経済的価値の両立を目指し、サステナビリティ経営を推進するニチレイグループの持続的な成長の一翼を担う拠点として期待されている。

冷凍食品市場が拡大する中で、麺類や米飯、スナックなど個食タイプの冷凍食品の需要が高まっている。コロナ禍で在宅機会が増え、テレワーク時の昼食や子どものおやつとして冷凍食品の利用機会が増加。業務用市場においてもデリバリーやテイクアウト需要の拡大や、調理現場の人手不足を背景に、簡便調理でさまざまなメニューを提供できる個食タイプの冷凍食品が注目されている。

こうした中で、ニチレイフーズでは冷凍食品の新たな需要創出として、伸長する「パーソナルユース需要」の取り込みを進めており、山形工場に新ラインを導入。今年2月から本格稼働を開始した。

パーソナルユース対応の第1弾が、今春に発売した家庭用冷食の新商品「冷やし中華」。マイクロ波の影響を受けにくい氷の特性を利用し、電子レンジでチンするだけで、冷たい麺が出来上がる商品として注目を集めているが、その製造を担っているのが山形工場だ。

新たに導入した製麺機(ニチレイフーズ山形工場) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
新たに導入した製麺機(ニチレイフーズ山形工場)

山形工場では冷食ライン新設にあわせ、新たに製麺機を導入。原料小麦の配合から製麺・茹で・冷却、具材のセットアップ、急速凍結・包装まで自社で一貫製造するこだわりの「冷やし中華」は発売後、計画比2割増と好調に推移。今秋の新商品は第2弾として「つけ麺」を発売予定。ニチレイフーズにとって新カテゴリーである麺のラインアップを拡充し、冷凍食品の新たな需要を広げる。

パーソナルユース需要の対応は家庭用だけでなく、業務用ルートでの展開も期待されている。山形工場の新ラインは麺だけでなく、主食とおかず(複数の具材)を自由自在にセットアップできるフレキシブルなライン設計を取り入れている。この機能を生かし、ニチレイフーズが得意とするハンバーグにおかずを盛りつけた惣菜セットや、パスタやご飯などにおかずをセットしたワンプレートの冷凍弁当など、業務用向けの商品開発にも力を入れている。

竹永雅彦ニチレイフーズ社長は「パーソナルユースは家庭用だけでなく、外食や中食惣菜、高齢者施設など、業務用ルートの可能性は大きい」と期待する。人手不足が深刻化する中で、簡便調理でバラエティ豊かなメニューをロスなく提供できる1食完結型の冷凍食品へのニーズは高まっており、ニチレイの高品質なモノづくりと提案力で、業務用ユーザーの課題解決と新たな市場創造に貢献していく構えだ。

外食・中食・給食向けに新商品を開発中(ニチレイフーズ) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
外食・中食・給食向けに新商品を開発中(ニチレイフーズ)

山形工場では新ライン設置とあわせ、地産地消の自然エネルギーを活用した環境対応の取り組みを強化。工場で使用する電力は、山形県内の水力発電所で発電した「よりそう、再エネ電気」に切り替え、CO2排出量を年間2千t削減。使用電力にかかるCO2排出量ゼロを実現した。

また、環境省のCO2排出量抑制対策事業を活用して、100%自然冷媒による冷凍設備を導入し、脱フロン化を推進。プラスチック削減の取り組みでは、新製品の「冷やし中華」は外箱のバンドレス化にいち早く着手。単箱仕様によるバンドレス化を推進し、年間プラスチックバンド使用量(約150t)を段階的に削減し、将来的にゼロを目指している。

◇ニチレイフーズ山形工場 主な新規設備の概要

〈所在地〉山形県天童市北目3-3-35
〈敷地面積〉工場棟約5千800㎡、冷凍冷凍倉庫約2千100㎡
〈投資金額〉約40億円
〈生産能力〉日産25t/日
〈稼働開始〉22年2月