値上げしないイオンの企業努力とは? 「トップバリュ」約5000品の大半を価格維持

 イオンは6月21日、イオンのプライベートブランド(PB)「トップバリュ」の食料品と日用品約5000品目のうち3品を値上げし、それ以外の大半の価格を維持していくことを明らかにした。

 原材料と物流費の高騰に円安が加わりコスト高の厳しさが増す中で、なぜ価格維持が可能なのか。

 その大きな理由としては、PBであることと巨大な販売網が構築されていることが挙げられる。

 この日発表したイオントップバリュ社の森常之取締役副社長戦略本部本部長は「PBは全ての原価を分解できる。製造委託先(以下、委託先)さまからお客様にお届けするサプライチェーン全てをコントロールできるからこそ、いろいろな手が打てる」と語る。

 このPBの特性を活かし、生産計画を綿密に立てて在庫を極力回避する仕組みが奏功。
 イオングループ各社からの需要集約とマーケットトレンドの分析で生産数を算出して委託先に計画的に発注。これにより、委託先も原料調達が計画的に行えるようになり余分なコスト発生を抑制している。

 これにイオンの全量買い取りの方針が後押しする。

 和田浩二取締役ブランド&コミュニケーション本部長は「製造しても発注がこないと在庫を持ちコストになるが、我々が全量を買い取ることで委託先さまの商品を販売し切ることでコストを発生させないようにしている」と説明する。

 委託先の在庫をなくし、委託先から直接商品を引き取ることで、問屋倉庫やその間の物流など中間流通コストも削減している。

「トッブバリュベストプライス あらびきポークウインナー」巾着包装の旧パッケージ(右)とピロー包装の新パッケージ - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
「トッブバリュベストプライス あらびきポークウインナー」巾着包装の旧パッケージ(右)とピロー包装の新パッケージ

 脱プラスチックなど環境対応にもつながる取り組みとして包材も工夫。

 あらびきポークウインナーは、巾着包装をピロー包装に変更。資材重量を約28%削減し、納品時の段ボール入数を10パックから12パックに増加し物流効率を向上させた。

 ツナ缶は、為替相場を綿密に見極めて生産計画を立てて工場の稼働率を向上。これに、スケールメリットを活かした独自調達でさらなるコスト削減を図り価格を維持している。

 冷凍パスタシリーズは、イタリアにある乾麺パスタの生産工場(原料工場)と直接取引している上に、原料工場から委託先までの物流工程もイオンが対応することで中間流通コストを削減。

 物流の工夫としては、他の要冷蔵商品と一緒に冷蔵トラックで配送していた常温保存可能なおでん商品を、生産計画と工場稼働率向上によって、おでん商品のみの常温輸送を可能とすることで物流コストを1商品あたり約10円の低減につなげている。

「トップバリュ ベストプライス ラベルレス天然水」 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
「トップバリュ ベストプライス ラベルレス天然水」

 天然水では、ペットボトルのラベルレス化も奏功。ケース販売することで生産ボリュームが向上し、22年度は生産拠点を昨年の9拠点から11拠点に拡大。
 「水は重たく、製造コストよりも物流費のほうが高い商品になるが、全国の製造拠点を増やし、イオンの物流センターまでの配送距離を短くすることで輸送コストを削減し価格を維持している」と語る。

 なお、7月4日以降に値上げされるのは「トップバリュベストプライス」の「マヨネーズ」「ノンフライ麺」「外箱を省いたティシューペーパー」の3品。

 7月4日以降の本体価格は「マヨネーズ」が198円(現行158円)、「ノンフライ麺」が68円(現行58円)、「外箱を省いたティシューペーパー」が195円(現行188円)となる。

 「トップバリュベストプライス」の「さらっと仕上がる キャノーラ油」は7月中に休売する。
 約5000品目の大半は価格維持していく。今後、さらなる価格改定は店頭で2週間前に告知する。