「い・ろ・は・す」容器刷新の真相  なぜ“しぼれるボトル”は“たためるボトル”に替わるのか?

 平たくたためる新ボトルの「い・ろ・は・す 天然水」(540ml)が20日、北海道で先行発売された。

 なぜ、しぼれるボトルから“たためるボトル”に替わるのか。

 13年ぶりの容器刷新に至った背景について、日本コカ・コーラの鈴木理マーケティング本部ウォーター事業部シニア・マネジャーは「近年、自然環境問題やSDGsの認知が一般的となり、人々が心地よく生活することへの意識がさらに高まっている」と述べる。

 「い・ろ・は・す」は2009年5月、“日本生まれの天然水を、おいしく飲み、しぼって(つぶして)リサイクルする”というエコアクションを提案するユニークなポジショニングの新しい天然水として誕生した。

 先進的なブランドイメージも特徴で、これには、しぼれるボトルの導入ほか、天然水ブランド初の試みとしてブランド名に平仮名を使用していることや、グリーンをモチーフにしたパッケージデザインが寄与している。

 健康的で持続可能な生活様式(ロハス)の意味合いを込めたブランド名が示すようにエコフレンドリーを打ち出した点も当時は画期的だったが、近年の環境意識の高まりでエコ訴求商品が一般化していく中で、改めて先進性に磨きをかけようとしたのが容器刷新の大きな理由と思われる。

 「ブランド価値である“おいしい”と“環境にいい”はそのままに、こうしたトレンドを反映しつつ、さらに先進的な要素を提案できる容器開発を目指すことにした」と語る。

左から新ボトルの「い・ろ・は・す 天然水」(540ml)と「い・ろ・は・す 天然水 ラベルレス」(560ml) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
左から新ボトルの「い・ろ・は・す 天然水」(540ml)と「い・ろ・は・す 天然水 ラベルレス」(560ml)

 開発にあたり参考にしたのが、20年に発売したラベルレスボトル「い・ろ・は・す 天然水 ラベルレス」(560ml)。

 水のおいしさと環境への配慮を感じてもらえるラベルレスボトルのデザインを取り込み、新たな価値を提供すべく開発されたのが、平たくたためる新容器となる。

 現行容器と同じく100%リサイクルペット(PET)素材を使用し、リブ構造(溝)をなくしても容器に必要な強度を確保できるスパイラル構造を採用。これにより容器肩部をなだらかな形状にし、これに沿って天然水がスムーズに流れるように仕立てられている。

 平たくたためる構造でリサイクル工程の効率も向上する。

 容器の開発を担当したコカ・コーラ東京研究開発センターの岩下寛昌容器開発グループプリンシパルエンジニアは「なだらかな肩口のスパイラル構造を採用したことで飲用時の流水量が1割増加した。スムーズに口に流れ込んでくることで飲み心地もよくなり、天然水のおいしさをより強く感じていただけると思う」と胸を張る。

新ボトルと現行ボトルの水の流れ - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
新ボトルと現行ボトルの水の流れ

 新ボトルの容量は540ml。現行容器の555mlから減らしたのは、デザイン性と飲み心地のよさを考慮した肩口デザインの形状を実現するためだという。

 「消費者には容量が多いほうが好まれるが、事前調査での好感度も高く“天然水をおいしく楽しんで飲んでいただく”といった価値提供に立ち返り540mlとした」と述べる。

 スパイラル構造は、ボトルに対して立体が斜めに変化する構造で屈折効果を生み日本の清流を表現。加えて、水の透明さを打ち出すためラベルをボトル下部に配置した。

 「通常、店頭で販売する際に、ブランドを目立ちやすくしたり、値段のプレートに被らないようにするためにラベルはボトルの上部に配置されるが、今回は、ラベルレスボトルのイメージを訴求するとともに水の透明感を最大限強調するため、あえてラベルを下部に配置した」と説明する。

 新ボトルの「い・ろ・は・す 天然水」は自販機でも販売される。

 そのため「デザイン性と、自販機適正を含むパッケージの基本物性の達成条件は部分的に相反することもあり両立させるために100種類以上のデザインを考案した」

 流通工程も入念に確認。

 日本コカ・コーラの渡部莉帆技術・イノベーション・サプライチェーン本部プロジェクトマネジャーは「容器形状が新しくなることで製品輸送時の挙動も今までと異なるため、輸送を想定したテストを繰り返し実施し流通工程において製品や段ボールが変形しにくい工夫を施した」と振り返る。

平たくたためる構造でリサイクル工程の効率も向上 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
平たくたためる構造でリサイクル工程の効率も向上

 北海道で先行販売される新容器には、札幌市の白旗山方面から長い年月をかけて深い地下をゆったり流れてきた天然水を使用。

 「このあたり一帯は支笏軽石流堆積物で構成されており、長い年月をかけて不純物が取り除かれ、硬度29というとても柔らかくておいしい水が採水される」と北海道コカ・コーラボトリングの菅原一機執行役員営業企画部長は語る。

 販売にあたっては「販売チャネルにおける具体的な展開手法や消費者に対する認知率アップへの取り組みなど全国展開へ向けた知見の蓄積とともに成功事例を作っていきたい」と意欲をのぞかせる。

 今回、540ml新ボトルを採用するのは、「い・ろ・は・す 天然水」と「い・ろ・は・す フレーバーウォーター」5種類。

 540ml以外の容量での導入や炭酸の新ボトル展開は今後検討していく。

 また、今回の新ボトルの他ブランドへの導入については「今後、ラベルレスやラベルフリーなどラベルの縮小がトレンドになるのは確実なので、ボトル全体で製品を見せる点やラベルのポジションなど今回の新容器開発で培った知見を他製品に応用していくことは十分に考えられる」(日本コカ・コーラの鈴木理氏)との見方を示す。