キユーピーは5月29日、野菜の魅力を体験できる複合施設「深谷テラス ヤサイな仲間たちファーム」を開業した。同施設は、埼玉県深谷市が進める「花園IC拠点整備プロジェクト」の一環で建設されたもの。12年に社内公募制度で選出されたキユーピーグループ社員の松村佳代さんによる新規ビジネス案が構想の出発点。年間来場者数として30万人を見込んでいる。
敷地面積(約1万7千600㎡)の約3割を占める農園には、30種類以上の野菜を栽培(年間では100種類ほど)。旬の野菜だけでなく、さまざまな生育状況の野菜が植えられ、体験農園を通じて参加者自身に野菜の魅力を発見してもらう。
マルシェには深谷市や市の近隣農家から仕入れた旬の野菜と果物を50種類以上取りそろえた。販売する野菜はズッキーニ、カラーピーマン、カラフルジャガイモ、カラフルニンジンなど。野菜のほかにもキユーピーのドレッシングをはじめとした加工品、オリジナルの「Today’s Salad Mix」や野菜を使ったフィナンシェを購入できる。スタッフが野菜の調理法や無駄なく使い切る方法を購入客にアドバイスするのも特徴的だ。レストランは、野菜の持ち味を生かした調理法に定評のある音羽和紀シェフと音羽創シェフが全面監修。その日入荷する新鮮な野菜を主役にその都度メニューを考えていることから、グランドメニューは用意していない。今後はタイミングを見計らい「野菜教室」といったイベントも開催する考え。
メディア向け内覧会であいさつに立ったプロジェクト担当の森佳光執行役員は「野菜の魅力をお伝えすることで日本人の野菜摂取の促進に貢献したい。深谷市の生産者は挑戦的な取り組みと前向きなアピールを続けている。当社ではこの施設から生産者の熱意を伝えていきたい」と意気込みを語った。発案者であり現在は施設運営会社の深谷ベジタブルコミュニケーション所属の松村さんは、ロケーション選びなどでの苦労を振り返る一方、「『野菜にときめく、好きになる!みんなの笑顔を育むファーム』というコンセプトに、私が考えていた思いがすべて込められている。野菜を通じて新しいことを発見していただきたい」と笑顔を見せた。
施設のオープニングセレモニーには、髙宮満社長と深谷市の小島進市長が出席。髙宮社長は「深谷市の皆さんに助けられ、ここまで来ることができた。一人でも多くの皆さんに野菜のおいしさと笑顔をお届けしたい」とあいさつ。小島市長は「拠点整備プロジェクトを構想して10年。さまざまな苦労があった。アウトレットの隣に農業と観光発展のための施設がほしいと考えていた時、キユーピーが手を挙げてくれた。何とか慣れようという思いで何年も一緒に深谷の農業を盛り上げていただいたことを思い出す。本日のオープンを市長として本当にうれしく思っている」と祝いの言葉を述べた。