日清オイリオ久野社長 コスト環境「大変厳しい」 油脂の価格適正化を継続

日清オイリオグループの久野貴久社長は19日の決算説明会で、22年度経営方針について「今期も見通しが不透明かつ厳しい事業環境が見込まれるが、ビジョン2030の方針に変更はなく、中期経営計画Value UP+で掲げた各領域での戦略の着実な遂行により、経営目標の達成を目指す」と語った。喫緊の課題では「世界的な油脂原料の需給ひっ迫による原料高騰、ウクライナ情勢によるサプライチェーンの混乱が続く中で、安定的な原材料調達と製品の安定供給に努め、あらゆるコストダウン施策の実行と、コストに見合った適正な販売価格形成に継続的に取り組んでいく」との考えを示した。

2年目を迎えた中計Value UP+は、急激な原料価格の高騰を踏まえ、最終24年度の定量目標を変更。売上高目標を当初計画の4千億円から5千400億円に引き上げ、資本効率性を重視し、新たにROIC目標値4.6%を設定した。ROE8%と営業利益目標170億円については変更なし。4年間の営業キャッシュフロー累計は原料高騰による運転資本増加で500億円に修正した。

久野社長は「事業環境は厳しいが、成長性・積極投資・持続性・効率性の4つのフレームワークの取り組みを推進し、CSV目標の達成と持続的な成長につなげていく」と強調した。

成長性では、ホームユース(BtoC)、業務用(BtoB)、マーケットを起点に顧客との価値共創によるBtoBtoCの各領域で、価値に見合った販売価格の形成や付加価値品の拡販を進め、売上拡大と収益力強化、資本効率性の向上を図る。

家庭用食用油では引き続き価格改定の浸透を図り、かけるオイルや味つけオイルなどの需要創出と付加価値品の拡販、クッキングオイルの構造変革を進め、さらなる市場活性化に取り組む。

業務用油脂でも同様に、原料価格の高騰に対応した適正な販売価格の形成を進め、コロナ禍からの回復が期待される外食・中食向けの提案を強化。人手不足やコスト上昇などの課題解決につながる機能性油脂の拡販や、ユーザーサポート機能を活用した価値提案を進める。

BtoBtoCでは、美容・痩身ニーズや脂肪燃焼体質に貢献する機能性素材として注目されているMCTを軸に、加工食品メーカーや流通と一体となった商品開発、プロモーション活動を推進。MCT入りチョコレートやゼリー飲料などメーカー各社の商品化も進んでおり、22年度のMCT使用量は前年の約5倍強と大幅拡大を見込む。消費者への情報発信もさらに強化し、MCTの需要拡大につなげていく。

なお、同社の前期連結決算は売上高4千327億円(28.7%増)、営業利益116億円(5%減)。連結の営業利益は、海外加工油脂におけるパーム油の時価評価益が貢献したものの大幅な原料コスト上昇を価格改定でカバーしきれず、国内を中心とする油脂・油糧事業は前期比50%減の大幅減益となった。

大豆、菜種、パーム油などの原料価格高騰による前期の国内油脂のコスト影響額は約400億円弱。今期も現時点で350億円程度の上昇を想定しているが、下期以降さらなる原価上昇が進む可能性もあり、原料価格に見合った油脂の価格引き上げが最重要課題となっている。