あいや、伊藤園、共栄製茶、ネスレ日本が共催する「抹茶と健康研究会」の第3回公開セミナーが13日、オンラインで配信され、研究会が助成した大学教授ら3人が抹茶が心理的ストレスや肺炎球菌に与える影響などに関する新たな知見を発表した。
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農業・食品産業技術総合研究機構の物部真奈美氏は、テアニン含量が少ない標準的な抹茶が体に与える影響を調査した。
マウスを4群に分け、水、煎茶、抹茶、低カフェイン抹茶をそれぞれ2週間摂取させた後、高所に設置した迷路での探索行動を調べたところ、抹茶の摂取群が最も高いストレス耐性を示した。
続いて喫煙者13人に、抹茶を2週間継続飲用してもらった後、禁煙を強いるストレスを与える実験を行った。喫煙衝動という比較的強度なストレスに反応する唾液中コルチゾールに有意差は認められなかった一方、急に禁煙を始めるという突発的なストレス直後には唾液α-アミラーゼ活性が、カフェイン摂取量に依存して上昇。1日のカフェイン摂取量約200㎎以上から、急性ストレスに対し交感神経が興奮しやすくなる傾向が見られた。こうした結果を踏まえ、テアニンが比較的少ない抹茶を継続飲用した場合、カフェインに依存するなどし、ストレス防御システムが働きやすくなる可能性を示した。
新潟大大学院の寺尾豊教授は、飲用抹茶による肺炎球菌の殺菌作用と毒素の細胞傷害作用を防ぐ効果について発表した。
肺炎は日本人の死因第3位で、肺炎球菌が原因となっている。研究では、抗生物質に代わる素材として飲用濃度の抹茶に着目した結果、65℃以上で抽出すると、肺炎球菌の殺菌に効果的であることが分かった。このほか、重症化につながるPLY毒素の活動を阻害する効果を確認した。一連の効果は、主に煎茶よりも約5倍多く含まれるカテキン成分のEGCGが担っているとした。
大阪大学の古川貴久教授は、抹茶が視覚機能に与える影響に関して報告した。 マウスの視運動応答を指標にした動体視力の測定法を使い、高齢と若年の各マウスに普通のエサ、煎茶を混ぜたエサ、抹茶を混ぜたエサをそれぞれ与える実験を実施。加齢で低下する視覚機能に対し、抹茶が与える効果の解析を続けているとした。
研究会は17年に設立。抹茶の健康効果を裏付ける研究を対象に、公募研究助成活動を行い、これまでに14の研究機関、23件を支援した。昨年6月から、4社が正会員となり第二期の活動を行っている。