全国パン粉工業協同組合連合会の關全男(せき・まさお)理事長(フライスター社長)は11日、会見を開き、これまで業界で慣行的に繰り返されてきた「小麦粉主体の価格改定」を見直す必要があると強調。あらゆるコストを回収するという共通認識を持たなければ「業界の発展に支障をきたす」と警鐘を鳴らした。麦価は昨年4月に5.5%、10月に19%と大きく上がり、今年4月も17.3%と上昇を続けている。加えて副原料や燃料費も高騰。これまで慣行的に続けられていた小麦粉主体の価格改定は限界にきている。また、業務用の現状と課題について富士パン粉工業の小澤幸市社長が説明した。
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關理事長 業界の歴史から見ても、非常に重要なターニングポイントを迎えている。パンをはじめ小麦粉を加工する業界はどこも同じ状況だと思われるが、特にパン粉業界の特殊事情を考えれば、同業者が共通認識を持ち臨まなければ今後の業界発展に支障をきたすと思われる。
これまでわれわれは、小麦粉主導の価格設定に終始していた。小麦粉の値段が上がるので値上げをお願いしますと。仮に上がった部分を吸収できなくても、次下がった時に調整することができていた。だが、今回のように小麦粉の上昇幅が大きく、高止まりすると、過去に回収できなかった部分を後から回収するのが難しくなる。
また、粉だけでなくイーストや油脂などの副原料、包材、運賃なども五月雨式に上がっている。今までのように小麦粉主体で価格を決めるのではなく、その他のコストもきちんと回収していくような考え方を業界の共通認識として持たなければならない。
パン粉は主たる食材ではなく塩や砂糖と同じく補佐的なものなので、用途が限定的。商品としての差別化が難しいカテゴリーであり、製造コストをかけている割には製品の評価が不明確である。だからこそ、きちんとしなければならない。粉価にお任せという日和見主義的な慣行を改め、業界の体質を変えていく必要がある。
小澤社長 パン粉は家庭用、業務用、一般小売用の大きく3つに分けられる。このうち、業務用についてはユーザーの希望に合わせ、メーカーが配合や焼成法を変えて作る注文生産が多い。シンプルな配合のものから、砂糖やショートニング、バターなど副原料を使うものもあり、その配合によって上げ幅も変わってくる。
いずれにしろ、小麦粉だけの転嫁では限界にきている。また、衛生管理の強化にも力を入れなければならず、そのためのコストも相当乗ってくる。パンはオーブンで焼いて完成だが、パン粉は焼いたパンをさらに電気で粉砕して冷蔵庫で保存する、もしくは燃料を使い乾燥するなど、さらなるコストがかかる。
小麦粉価格の4倍が乾燥パン粉の適正価格と考えているが、実際には2倍から2.5倍取れているかどうかというのが現状。業務用は7月から8月にかけ値上げが進むと思われるが、秋口も麦価のさらなるアップが見込まれており、今回以上の値上げが懸念される。