今期から味の素社の新社長に就任した藤江太郎氏は、11日に開催した3月期決算発表の中で、新体制での経営方針として、「ASV(味の素グループシェアードバリュー)をトコトン本気で追求するためにASV経営と『志×熱×磨』を受け継ぎ、『スピードアップ×スケールアップ』を進化させる。そのために「100日プラン」(100日間の実行計画)を作成し、ギアチェンジとスタートダッシュを図る」考えを示した。
「世界の競合会社との差が開いているのはスピードアップ×スケールアップの差だと認識している」とし、ビジョン達成のために「100日プラン」を作成。100日で結果を出し、100日でロードマップを作成し、100日で課題を明確にするなどスピードを重視。組織体制でも取締役会の監督機能をさらに強化することでスピードアップに取り組み、スケールアップでは調味料や冷凍食品、ヘルスケアなど重点6事業への集中を明確にした。
食品の値上げについては、「さまざまな原材料価格が上がっているため、生活者には値上げは仕方ないという共通認識が出てきた。店頭価格が上がるには3か月から半年かかり、一時的に数量が落ちる商品もあるが、調味料などは変わらない。さまざまなコストが上昇しているため、22年度も必要な部分では再値上げをお願いすることもある」などの考えを示した。「コストダウンを図りながら、原材料価格高騰や価格に左右されない事業構造を目指す」とし、製品のスペシャリティ化や購買面では調達の工夫などで対応。また、事業モデル変革により利益率が高い高付加価値製品を生み出す方針だ。
今年の食品の個人消費については、「食品の個人消費は厳しい見方をしており、予算もかなり固くみている。しかし、お役立ちできる部分は伸ばせるはずだ。それには掘る場所、掘り方をどう変えてゆくかが重要だ」とし、生活者解析・事業創造部のデータや、120万人のユーザーがいるWEBサイト味の素パークによる消費構造の変化を活用し、マーケティングやブランディング、製品開発に生かしていく。
また、コロナによる規制緩和については、「コロナによる規制緩和が進み、6、7月にはインバウンドを含めた緩和が行われる。そのためリベンジ消費が生まれるだろうし、インバウンドが一挙に爆発することは間違いない」。
前3月期の連結決算は779億円の増収、77億円の増益を達成。売上高は1兆1千493億円と16年のIFRS導入後で最高、事業利益は1千209億円となり、過去3年連続最高益を更新した。今期は1千606億円の増収、30億円の増益を計画しており、原料や燃料が高騰し厳しい事業環境の中で、単価向上や販売数量などで増益を見込んでいる。
発酵主原料や副原料、燃料価格は過去10年で最も高かった11年を超える水準と認識。今年度は機敏な価格対応を行うとともに、コモディティ価格に左右されない収益構造に向け、さらなる事業構造改革を進める。