海外での養殖と加工のパイオニアとして、潜在的な海苔の海外需要を開拓。日本、欧米、中国と国内外に拠点を構え、グローバルにビジネスを展開する。21年度漁期と世界の市場動向などについて髙岡則夫社長に聞いた。(取材は4月中旬)
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――今漁期全般の振り返りをお願いします。
髙岡 わが国の海苔生産は予想通り「低位安定」で推移した。平均単価は一昨年が13円40銭、昨年が10円48銭で、その中間よりやや安い11円75銭程度となりそう。生産量は約63.7億枚と減作にもかかわらず、実需を反映して相場が大きく上がらなかった。作柄自体は悪くなく、特に有明海産上級品の品質は素晴らしかった。しかし、数量的には今後も大きな伸長は見込めないことがはっきりとした。
業務用を中心とした国内需要は20年に大きく減少し、21年はさらに減った。22年は21年比で持ち直している。幸い弊社の場合、大手コンビニ向けは1年前に発売した味付海苔を用いた歯切れの良い直巻タイプの細巻寿司が好調で、従来型のおにぎりの落ち込みをある程度カバーできた。
韓国は新品種の積極的な投入などで数量的には昨漁期を上回ったが、品質は芳しくなかった。中国は温暖化や環境問題への対応のため、江蘇省南側の漁場で養殖面積が減少し、より北方の山東省へ漁場が移りつつある。生産量はほぼ平年並みだが、コロナ禍で入札会が延期、中止になるなど状況は混沌としている。
――海外市場の動向について教えてください。
髙岡 欧米、オセアニアは好調に推移している。特に米国市場は好景気に支えられ大きく伸長した。コロナ禍で一時的に需要が減退したものの、すぐにテイクアウト中心に需要が回復・伸長し、レストラン営業が再開された途端に、日本産など高価格品も爆発的に伸びた。欧州も好調だが、ウクライナ、ロシアとも大きな市場だったので直接的な影響が生じている。全世界的な物流の大混乱で海上運賃は以前の5倍ほどとなり、コスト増のみならず遅延や欠品による機会損失も多々発生した。
幸い弊社の場合は、世界各地に製造拠点を分散させていたため機会損失を低減させることができた。中国・上海のロックダウンによって上海髙岡屋が稼働できなかったので、ポーランドの髙岡屋ヨーロッパに欧州向け、髙岡屋メキシコに北米向け、日本の埼玉工場の保税加工にオセアニア向けを振り替えて対処した。こうした非常時こそ弊社の機能を活用し需要に応えたい。戦争の影響は長期化し、コロナ禍も続くと思われるので、単純にコロナ禍以前のような世界には戻らないだろう。
――韓国、中国産の台頭が著しいです。
髙岡 韓国は品種改良によって収穫性を向上させ、一次加工設備の大型化などで生産性を高めている。中国は漁場を北方に拡大することで温暖化に対応するなど活路を見いだしている。残念ながらわが国では、後継者問題などで海苔生産者は減り続けており、国際競争に勝てないどころか、国内需要をまかなうだけの生産基盤も失われてしまった。養殖、一次加工の民営化や、入札制度に象徴される流通の見直しなどの対応が必要だ。わが国の保有する技術やノウハウを世界各地の海苔生産に投入し、海苔産業を世界的に活性化させ伸び続ける需要に応えたい。