なぜコーヒーのUCCが静岡茶をアピールするのか? 渋谷ロフトで高品質とSDGs両立する世界農業遺産「茶草場農法」伝える企画展

 UCCグループのソロフレッシュコーヒーシステムは、渋谷ロフト(東京都渋谷区)で15日まで開催されている企画展「静岡の茶草場農法展」に参画し、カプセル式ドリップコーヒーシステム「ドリップポッド」で淹れた“お茶”を提供している。

 「ドリップポッド」事業を通じたSDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」の達成が目的。
 企画展では高品質なお茶の栽培とSDGsを両立する静岡の世界農業遺産「茶草場(ちゃぐさば)農法」を前面に押し出している。

 9日取材に応じたソロフレッシュコーヒーシステムの西川満美子さんは「コーヒーもお茶も似ていてご家庭でおいしく淹れるのは難しい。イベントを通じて、環境にも暮らしにもよりよいものを生活の中で使い、手軽においしさを味わえる体験をしていただきたい」と呼びかける。
「ドリップポッド」と専用カプセルの「深蒸し静岡煎茶」と「静岡まろみ焙じ茶」 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
 UCCは20年2月に静岡県掛川市と連携協定を締結。同年3月に「ドリップポット」の専用カプセル「深蒸し静岡煎茶」を茶草場農法で栽培された掛川産茶葉100%に切り替えてリニューアル発売し、21年5月には掛川産茶葉100%の「静岡まろみ焙じ茶」を発売開始した。

 9日企画展に訪れた掛川市の久保田崇市長は「お茶は昔、作れば売れていたが、今はお茶離れが進み“こういう飲み方があります”とか“こういうお茶があります”としっかり提案しないと飲まれない。UCCさんの『ドリップポッド』は提案の1つだと考えている」と期待を寄せる。

 掛川市ではお茶の普及啓発として婚姻届け提出者に急須をプレゼントしている。
 最終的には「ドリップポット」などをきっかけに「急須で淹れて飲むよさや美しい茶園のことを日本各地に知っていただきたい」と語る。

「深蒸し静岡煎茶」と「静岡まろみ焙じ茶」の外箱 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
「深蒸し静岡煎茶」と「静岡まろみ焙じ茶」の外箱
 
 茶産地と荒茶生産量は就労者の高齢化と就労者不足で減少の一途にある中、持続可能な生産に向けては、価値あるお茶が価値に見合った価格で売れる必要がある。


 この価値あるお茶の1つが茶草場農法でつくられたお茶で「掛川市の東山地区ではおいしいお茶をつくるためには茶草場農法が必要ということが信じられている。実際、掛川市は品質がよいお茶づくりの地域として認められ、全国茶品評会では農林水産大臣賞を受賞するなど毎回上位を占める」と掛川市産業経済部お茶振興課の掛川大介さんは説明する。 

茶草場とは、茶園に有機物として投入するササやススキなどの草を刈り取るための半自然草地のことで、刈り取った草を乾燥・裁断して茶園に投入する効果としては茶園土壌改善・除草・肥料の流出防止・土壌の保湿保温などが挙げられる。

掛川市産業経済部お茶振興課主幹兼お茶振興係長の掛川大介さん - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
掛川市産業経済部お茶振興課主幹兼お茶振興係長の掛川大介さん

 茶草場農法はそもそも良質なお茶を生産する営みであったが、環境省の調査により茶草場が多様な生物の生息する特別な場所であることが判明。300種類以上の草地性植物ほかカケガワフキバッタやフジタイゲキといった固有種や絶滅危惧種も確認されている。

 このように農業と生物多様性が同じ方向を向いて両立していることが世界から評価され、2013年5月に国際連合食糧農業機関(FAO)から世界農業遺産に認定された。

 ただし茶草場は、維持に人手と労力を要することから年々減少し、静岡県以外ではほとんどみられない特長的な風景となっている。

世界農業遺産「茶草場(ちゃぐさば)農法」を前面に押し出してアピール - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
世界農業遺産「茶草場(ちゃぐさば)農法」を前面に押し出してアピール

 静岡県の掛川市・菊川市・島田市・牧之原市・川根本町の4市1町が世界農業遺産の認定地域とされる中、掛川市の東山地区は全ての茶園に茶草場を取り入れている。

 企画展では、東山地区の田中農園から提供されたチャノキ(茶の木)を展示。4市1町の茶葉製品も並べ、種類別では深蒸し煎茶・浅蒸し煎茶・茎茶・粉茶・ほうじ茶を紹介している。

 掛川市の茶園は概ね日照時間が長いことから、茶葉には豊富なカテキンが含まる。カテキンによる苦み・渋みを抑えて味をまろやかにするため、約60年前から荒茶工程として深蒸しを採用している。

 「ドリップポット」の「深蒸し静岡煎茶」と「静岡まろみ焙じ茶」の開発には、静岡県の茶商・赤堀商店が関わり抽出メカニズムにあわせて茶葉の合組と裁断の細かさを試行錯誤して行われた。

渋谷ロフト1階の間坂ステージで「深蒸し静岡煎茶」と「静岡まろみ焙じ茶」を提供し3階のクック&ダインフロア特設エリア(写真)で全15種類の「ドリップポッド」専用カプセルのコーヒーとお茶を提供。 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
渋谷ロフト1階の間坂ステージで「深蒸し静岡煎茶」と「静岡まろみ焙じ茶」を提供し3階のクック&ダインフロア特設エリア(写真)で全15種類の「ドリップポッド」専用カプセルのコーヒーとお茶を提供。

 「静岡の茶草場農法展」と題した今回の企画展は、ロフトとSDGsマガジン「ソトコト」がコラボし“日本のうまいコト、いいコト”を提案する「ロフコト雑貨店」第一弾の一部で渋谷ロフトのみでの実施となる。

 「ロフコト雑貨店」第一弾は渋谷ロフトと銀座ロフトで15日まで開催され、お茶をテーマに、お茶の時間を楽しむ道具や伝統的な茶器、お茶の魅力を発信する人物を紹介している。
 
 ロフトは21年11月に「LOFT GREEN PROJECT“雑貨のチカラで、暮らしと地球をしあわせに。”」をスローガンに掲げサステナブルな取り組みを始動。「ロフコト雑貨店」をその一環と位置付けている。

田中農園の「深蒸し煎茶」 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
田中農園の「深蒸し煎茶」
「ロフコト雑貨店」第一弾 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
「ロフコト雑貨店」第一弾