コカ・コーラとともに歩んだ吉見町 町制50周年、ボトルtoボトルへ舵

埼玉県吉見町(よしみまち)は、埼玉県内初の取り組みとしてペットボトル(PET)のボトルtoボトルへ舵を切った。吉見町は昨年12月、2050年までにCO2排出量を実質ゼロにする「吉見町ゼロカーボンシティ宣言」を表明。そこには当初、脱PETの内容を盛り込むことも検討されたが、新たに化石由来資源を使うことなく使用済みPETを何度もPETに循環させるリサイクル手法であるボトルtoボトルの道を選択した。このような流れから、4月12日にコカ・コーラボトラーズジャパンと「包括連携に関する協定」を締結した。

同協定はSDGs推進ほか防犯・防災、健康・スポーツなど多岐にわたる内容。その一角を占めるものとして、吉見町内の集積所に回収されたすべての使用済みPETが、日本容器包装リサイクル協会(容リ協)を通さずにコカ・コーラのルートを通じてボトルtoボトルに回されることが定められた。

締結式に臨んだ吉見町の宮﨑善雄町長は「1971年、当時の吉見村が水道事業を始めるに当たり、多額の設備投資費を村民だけでは維持することはできないということで企業誘致をして、約50年にわたりコカ・コーラさまとともに歩んできた。言い換えればコカ・コーラさまなくして町の発展はなかった」と振り返り、次の50年への第一歩として今月末に発刊される広報誌などを通じてボトルtoボトルをアピールしていく考えを明らかにした。

吉見町では昨年実績で53tの使用済みPETを回収し、これまではこのほとんどを繊維や食品トレイにして一度だけ再利用するカスケードリサイクルに回していた。

カスケードリサイクルとは、使用済みPETを食品トレイや繊維などほかのプラスチック製品に再利用する手法だが、一度再利用してしまうと再びPETに戻すことができず最終的には焼却される。

これを改めてボトルtoボトルに移行していくには、キャップとラベルを取り除きボトルはすすぐといった正しい分別回収が必要で、主にこのことを啓発していく。

「講演の場でもボトルtoボトルの意義を積極的に発信していく。吉見町で成功事例をつくり埼玉県全域に広がっていくようにしていきたい」との青写真を描く。

課題としては、集積所以外の事業所や自販機リサイクルボックスの使用済みPETを挙げる。

「分別は、鴻巣・北本・吉見の2市1町でかなり定着している。事業所からのPETはこれから考えていかないといけない。自販機についてはどこまでPRできるかコカ・コーラさまと協議していく必要がある。町内のコンビニや酒屋には商工会を通じて回収のお願いをするなどして、しっかり取り組んでいかないといけない」との見方を示す。

一方、コカ・コーラボトラーズジャパンとしても、自治体とのボトルtoボトルに関する取り組みは今回が初めてとなる。吉見町を皮切りにエリアを広げていく考えだ。

この思惑に加えて、吉見町との関係強化も図る。コカ・コーラボトラーズジャパンの奥西英夫埼玉工場長は「吉見町の地域活性化を図ることを目的に多岐にわたり連携し、さらなる関係を築いていきたい」と意欲をのぞかせる。

ボトルtoボトルで繰り返し使われる再生PETについて、コカ・コーラボトラーズジャパンサステナブルストラテジー部の渡邉真琴部長は「新たに化石由来資源を使ってつくられるバージンPETと比べて約60%のCO2削減が期待される」と述べる。