コロナで苦境の喫茶店 方向性定まらないまま新店開業 勝算は昭和レトロ 東武百貨店が但馬屋珈琲店に感じる魅力とは?

 東武百貨店池袋本店(東京都豊島区)11階のレストラン街に「但馬屋珈琲店」の新店舗「池袋東武店」が21日オープンする。

 喫茶店の軒数は減少傾向にあり、そこへコロナ禍が追い討ちをかける中、「正直言うとコロナ禍における店舗事業の明確な方向性が定まっていない」と吐露するのは但馬屋珈琲店を運営するロメオの倉田光敏常務取締役。19日、内覧会で取材に応じた。

 「21年は喫茶店の廃業率が過去最多になるなど、コロナの影響で喫茶店を取り巻く影響は非常に厳しい状況にある。雇用を守りたい思いで全国の百貨店や商業施設の方々とお会いして商談を重ねる中で、東武百貨店さまに親身になっていただいた」と続ける。

100客以上の多種多様なカップ&ソーサーが並べられる店内 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
100客以上の多種多様なカップ&ソーサーが並べられる店内

 一方、時を同じくして東武百貨店池袋本店では純喫茶のテナントを探し求めていた。
 「池袋本店のレストラン街には純喫茶のカテゴリーがなく、レストラン街でアンケートを行った結果、純喫茶を求める声が多かった」(東武百貨店広報部)と述べる。

 テナント選定にあたり決め手になったのは昭和レトロといった情緒感。
 「昭和レトロという切り口で若い方を中心に純喫茶がトレンドになっている。担当者から聞いたところ、いろいろな純喫茶がある中で、店内に多種多様なカップ&ソーサーが並べられ、お客様の印象にあわせてカップ&ソーサーを出されている点に惹かれたという」(同)。

 但馬屋珈琲店は、東京オリンピックが開催した昭和39年(1964年)に創業者の故・倉田数雄氏が新宿西口・思い出横丁に開業した純喫茶「エデン」が起源。
 1987年に「エデン」を改装し自家焙煎「但馬屋珈琲店」を開店。店名は、創業者の出身地・兵庫県但馬地方に由来している。

 多種多様なカップ&ソーサーは、倉田雄一社長の趣味によるところが大きいという。
 「現社長は骨董品好きで、カップ&ソーサーも珍しいもの、窯元のものなど和洋折衷で取り揃え、いろいろなとこから集めている。お店のテーマである大正ロマンの雰囲気づくりの役割を担い、各店に100客以上を取り揃え、基本的に同じものはないようになっている」(倉田常務)と説明する。

コーヒーは直火(ちょっか)式焙煎による深煎りコーヒーをネルドリップ抽出で提供している。 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
コーヒーは直火(ちょっか)式焙煎による深煎りコーヒーをネルドリップ抽出で提供している。

 カップ&ソーサーや調度品などによる純喫茶の空間づくりに加えて、但馬屋珈琲店が強みとするのは自家焙煎とコーヒーへのこだわり。
 「直火(ちょっか)式焙煎による深煎りコーヒーを最高の抽出方法といわれているネルドリップ抽出で提供している」。

 中でも「但馬屋珈琲店 特選オリジナルブレンド」は、30年以上の定番メニューで、日本各地のコーヒー専門店を飲み歩いて研究して編み出されたという。

 これらの強みに価値を上乗せすべく、新店舗の池袋東武店では、但馬地域の特産品を使った東武オリジナルメニューを販売する。

 但馬牛を使用した特製サンドイッチや香住(かすみ)漁港だけで水揚げされるベニズワイガニ(香住ガニ)を使用したスパゲッティを取り揃える

但馬牛を使用した特製サンドイッチ - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
但馬牛を使用した特製サンドイッチ

 そのほか「東武沿線のお客様にちょっとした旅行気分を味わっていただき、微力ではあるが少しでも地方の生産者を応援したい」との考えから、但馬地方に限らず、東武百貨店で開催される全国の物産展と連動した限定メニューの販売も予定している。

 倉田常務は食品メーカーでの経験を経て15年から現職。就任後に手掛けたコーヒー卸売事業と通販事業が現在、苦戦する店舗運営を底支えしている。
 
 卸売商品の9割を占めるのがドリップコーヒーで、百貨店や高品質商品を扱うスーパーなど約400店に採用されている。現在は好調につき生産がタイトとなり新規取引を一時停止している。
 

ドリップコーヒー「但馬屋珈琲店 新宿ブレンド」 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
ドリップコーヒー「但馬屋珈琲店 新宿ブレンド」

 「ご購入者の大半が但馬屋珈琲店をご存知でない新規のお客様で、店舗への送客につながり好循環になっている。物販は毎年150%程度で伸び、固定費がさほどかからず利益率が高いことから引き続き注力していく。現在、2店舗内にある焙煎機がフル稼働のため、焙煎のあり方を今後検討していく」考えだ。

 店舗運営については、効率を求めず試行錯誤していく。

 「ようやく喫茶事業の形というのが少しおぼろげながらみえてきたところでコロナ禍になってしまった。但馬屋珈琲店のために時間と労力を費やしていただいている従業員に還元していくため店舗でも儲けていかないといけない。効率化では大手に絶対に勝てないため、接客や内装を含めて落ち着けて寛げる空間づくりに磨きをかけていく」と意欲をのぞかせる。

 池袋東武店が位置するレストラン街では、徐々に客足が戻りつつあるという。
 「まん延防止等重点措置解除後にお客様が増え、コロナ前の19年対比で80%後半まで戻ってきた感じがする」(東武百貨店賃貸事業部)と述べる。

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