22年の一番茶シーズンが到来し、スーパーなど量販店でリーフ(茶葉)の新茶商戦が本格化していく。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う巣ごもり需要による特需はピークを過ぎたものの、大手茶商からは「スーパーでのティーバッグやリーフの販売はほぼ横ばい。コロナ前の19年よりは売れている」との声が聞かれる。急須離れによるリーフの厳しい販売環境が続く中で、回復基調が見られる通年販売や葬儀を中心とした贈答関連の需要を取り込もうと、4千円台から1千円台まで販売用途に応じた選別買いがより徹底されるシーズンになりそうだ。
例年、新茶商戦は八十八夜(今年は5月2日)前後に最盛期を迎える。量販店や専門店は年々、新茶の売り出し時期をできるだけ前倒しすることで、販売のヤマ場となる4月下旬から5月初旬の大型連休中に向けてリーフの消費を喚起してきた。
今年の静岡、鹿児島の国内二大茶産地は生育が順調で、ほぼ平年並みに推移している。鹿児島ではすでに種子島をはじめ、本土物のわせ品種を中心に取引がスタート。生育が早かった昨年に比べると出回りは7日前後遅い。このため、量販店に販路を持つ関東地方の茶商は「昨年のように新茶セールに合わせて大々的に広告が打てない。少量でも良品を見極めて新茶に仕上げていく」と慎重な仕入れ姿勢を強調する。
静岡県内の大手茶商が関心を寄せるのは、取扱量が多い通年販売用の原料だ。相場全体の先行きについて「一茶の相場は2千500円で一度止まって、緩やかに値を下げながら1千円前後で止まるだろう。800円台は出てこないと予想して、仕入れ計画を立てている」と語る。その上で「昨年は1千500円程度で終わったので、1千円台の数量が少なくて在庫が足りない」と指摘。「1千円台は低価格帯の商品を作るのに重宝するので、多くの茶商が必要としているはず。下ものは高くなると思う」との見方だ。
コロナ禍が3年目を迎えて、国内でも感染症対策と社会経済活動を両立させていく行動様式が定着しつつある。この茶商によれば、自社のギフト関連の売上はコロナ禍により20年は前年比で20%程度下がった。しかし「今年1~3月は前年比105~106%で推移している。葬儀やギフトの需要が相当戻ってきた」と手応えを口にする。その上で「日常生活では味わえない品質の良いお茶を知ってもらえる機会。しっかりと訴求してリーフ茶の文化を再興していく」と4~3千円台の仕入れにも意欲を見せる。
一方で、この茶商はドリンク原料向けに関して、混沌とするウクライナ情勢などを背景に原油価格が高止まりすれば、秋冬番茶の生産動向に与える影響が大きいと懸念する。秋冬番茶は一茶、二茶に比べて茶農家にとって利幅が薄いため、茶工場の稼働コストが膨らめば「摘採を止めて、来季に向けて茶葉を刈り落とすという動きも出てくるのでは」と動向を注視する構えだ。