「社長のおごり自販機」が生む想定外の飲用シーン 縮小の自販機市場にあらがうサントリー

サントリー食品インターナショナルは、縮小する自販機市場の流れにあらがいシェアアップを図るべく法人向け自販機サービスを拡張していく。

法人オフィスでの自販機について、単に飲料を販売するマシンという考え方ではなく、利用者に直接サービスを提供できる特別な接点ととらえている点がポイント。これを踏まえて法人の経営課題解決に向けたサービスを次々と開発している。

その直近の好例が昨年10月から首都圏エリアでサービスを開始した「社長のおごり自販機」。

これはオフィスでのコミュニケーション活性化という経営課題に向けたサービスで、社員2人がそろい自販機の対象部分に社員証を同時にタッチすると、それぞれ1本ずつ飲料が無料でもらえる仕組み。飲料代金は設置先である法人が負担し、サントリーは法人に福利厚生としての導入を提案している。

その滑り出しは好調で、問い合わせ件数が想定を大きく上回り、また首都圏以外からの引き合いもあることを受け、5月からサービス対象エリアを全国に拡大する。

これにより22年設置台数目標を当初掲げていた100台(100社)から200台(200社)に上方修正。23年には1千台(500社)を目指していくことも明らかにした。

導入済み企業では、現在のところ既存自販機との差し替えではなく、1台の設置が2台になるなどの純増での設置となり、さらに既存自販機の売上を落とすことなく、これまでになかった飲用機会を創出しているという。

「ボスマート」(サントリー食品インターナショナル) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
「ボスマート」(サントリー食品インターナショナル)

3月30日取材に応じた須野原剛ジャパンVM事業本部マーケティング部長は「われわれも想定外だったが、導入しているところでは今のところ純増となっており他社さまの自販機も減っていないという。お昼に外出先で買われていた代わりになっているなどの仮説を立てている」と説明する。

コミュニケーションの活性化でも手応えがあり設置先からは「普段会話していない人と話すきっかけになった」「自販機の前であんなに盛り上がったのは初めて」の声が多く寄せられ、本社から事業所への波及の動きもみられるという。

「社長のおごり自販機」は社員証を活用したサービスだが、今後は社員証を導入していない法人に向けても、専用カードを新たに用意して導入を進めていく。

サントリーは「コミュニケーション活性化」「職場環境充実」「健康経営サポート」の3領域で法人向け自販機サービスを拡張する。

職場環境充実の領域では、外出時間がないときの小腹みたしの利用者ニーズと「出入企業を増やしたくない」「金銭管理が不安」という導入企業のニーズを汲み取り、飲料と軽食が販売できる新サービス「ボスマート」を本格展開する。

自販機の横に軽食用の什器を設置して、自販機で余っている販売ボタンを活用して自販機をセルフレジとして展開していくもので「自販機には余剰ボタンが存在する機種がある。(その機種は)飲料を入れる冷蔵庫の部屋数が30個に対して表のボタン数は36個あり、この余ったボタンをレジボタンとして活用できれば、飲料を減らさずに自販機の外の商品も販売することが可能となる」という。

軽食の品ぞろえについては、対象自販機の余剰ボタンが6個であることからカップ麺やワンハンドの菓子など6品を想定する。軽食の売場づくりは、オペレーション負荷とのバランスをとりながら磨きをかける。

「DAKARA給水所」 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
「DAKARA給水所」

「常に同じ商品では売上が落ちてしまうため季節に応じた商品を一部入れ替えるといった年間スケジュールを用意している」という。

昨年、軽食の適正やオペレーションを確認するため8千台をテスト導入したところ「平均すると飲料と軽食あわせて2割増となり、飲料だけをみても若干伸長しマグネット効果がみられた」と振り返る。今年は4千台増の1万2千台の導入を目標に掲げる。

健康経営サポートの領域としては、健康経営をサポートする「SUNTORY+」に加えて、企業の熱中症対策を目的とした新サービス「DAKARA給水所」を開発した。

これは、工事現場などで「従業員に飲料が行き届いているか確認したい」導入企業に向けて、自販機の対象部分に専用カードをタッチすることによって飲料を無料で提供するもの。熱中症対策商品のみの指定や1日あたりの利用上限本数の設定などカスタマイズ可能となっている。23年に100台の展開を目標に掲げる。