キリンビール 今年は「第二の創業期」 ビール魅力向上に本気 1千万人の飲用体験創出へ

キリンビールは「ビールの魅力化」に本気だ。今年を「第二の創業期」と位置付ける同社では、ビールカテゴリーで「強固なブランド体系の構築」「新たな成長エンジンの育成」を戦略に掲げる。これを担うのが、フラッグシップブランド「キリン一番搾り生ビール」と、昨年発売のクラフトビール「スプリングバレー 豊潤〈496〉」の二本柱である。

14日の発表会で堀口英樹社長は「ビール類市場は17年間継続して減少。コロナが落ち着けば一時的には回復するだろうが、長いトレンドを見れば今後も縮小すると予測せざるを得ない。ビール類がこれからもお客様から持続的に愛されるために、ビール魅力化に本気で取り組むことで第二の創業期としたい」と宣言。26年にかけての酒税改正を大きな転換点とみて、家庭用の缶製品を中心とした再成長を目指す。

本流ビールと位置付ける「一番搾り」は、昨年のフルリニューアルで98%の消費者から「おいしい」との評価を獲得(同社調べ)。ビールに求められるものが、従来の「キレ」からブランドの価値である「味わいあるおいしさ」へ変わってきたとみて、20年発売の「一番搾り糖質ゼロ」とともに本流ビールのおいしさをさらに磨く。新CMの展開に加え、同社史上最大500万本規模の飲用体験機会の創出を図る方針。

新たな成長エンジン育成にも注力。昨年のクラフトビール市場規模は前年比191%(インテージSRI)とみられ、増加分の大半を占めるのが「スプリングバレー 豊潤〈496〉」。飲用者の増加に大きく貢献した。「より充実した家飲みの時間を過ごしたいというコロナ禍以降の大きなニーズの変化に対し、スプリングバレーだからこそできることがある。それは『ビールってこんなにおいしかったんだ』という発見の提供。百年後もビール市場が魅力的であり続けるために、価値をお届けできるブランドだ。感動の体験にこだわりマーケティングを進める」(常務執行役員マーケティング部長・山形光晴氏)。

スプリングバレーでは「ビールが、もう一度始まる」をテーマに、ブランドアンバサダーとして俳優の吉永小百合さんを起用したCMを展開。年間500万人の飲用体験のほか、会員制生ビールサービス「キリン ホームタップ」向けPET製品の製造強化へ36億円を投資。缶の製造工場も追加予定としている。

22年の販売計画は「一番搾り」9.8%増、「同 糖質ゼロ」20.5%増、「スプリングバレー」52.9%増。「チャレンジングな目標だが、ぜひ達成したい。ビール類市場全体の活性化にもつなげる」(堀口社長)と意気込む。