家庭用食用油 猛烈な逆風下でも前年確保 新たな値ごろ感が定着へ 付加価値シフトも加速

過去にない原料高騰に直面する製油業界。今期は4月・6月・8月・11月と、短期間で異例となる4度の価格改定を実施。家庭用食用油でも夏以降、汎用油を中心に値上げの浸透が進んできた。

4-12月の家庭用食用油市場は、コロナ禍で需要が急拡大した前年の反動や価格改定の影響で金額・物量ともに前年割れだが、19年比ではプラス水準を維持。店頭価格上昇が進んできた9月以降は金額プラスに転じており、新たな値ごろ感が定着するにつれて物量減の影響も薄まってきている。

ボリュームゾーンのキャノーラ油の価格上昇で、相対的に価格差が縮小したこめ油など中段の付加価値品へのシフトも加速。こめ油は20年度の金額34%増に続き、今期も25%増と快走し、年間130億円規模のカテゴリーに成長する見通し。物量も2年連続で伸長しており、付加価値型の万能オイルとして定着が進んでいる。

内食機会の増加で20年度25%増と伸長したごま油は、今期も前年水準を維持。オリーブオイルやアマニ油など「かけるオイル」の需要も堅調で、付加価値化が市場の継続的な拡大を支えている。

こうした中で、最重要課題だった価格改定は流通側の理解を得て着実に浸透が進んできた。4―12月の市場は金額ベース3%程度のマイナスだが、下期以降は単月プラスに転じており、このままのペースでいけば通期でも過去最高だった前年の1千600億円市場を確保できる見通し。

流通サイドも内食化が一巡した中で、価格改定の逆風下でも基礎調味料最大カテゴリーである食用油の前年確保は大きな意味を持つ。生活必需品としてのポテンシャルと、付加価値化が進む食用油市場の底堅さを改めて示した格好だ。

一方で、コスト環境はさらに厳しさを増している。製油各社の第3四半期決算は大幅減益で、長期化するコスト上昇を吸収できていない。原料相場の上昇も収まる気配がなく、円安や原油高の影響も深刻化しており、製油各社は4月から計5度目となる価格改定を実施。急騰する油脂コストへの対応を急いでいる。

汎用油の店頭平均価格は今後さらなる上昇が見込まれる。過去にない水準だけに、消費行動にも変化が予想される。調味料感覚で楽しめる「味つけオイル」(日清オイリオ)、環境と使用性に配慮した紙容器の「スマートグリーンパック」(J-オイルミルズ)など、新たな需要創造と並行して、油種・容量・価格帯の多様なニーズへの対応も重要となっていきそうだ。

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