世界のコーヒー豆の5%を扱うスターバックス 持続可能な生産への取り組みとは?コーヒースペシャリストが解説

スターバックスは、持続可能なコーヒーの生産を目指し、気候変動への対応と並ぶ活動として生産者の支援に取り組んでいる。

スターバックスによると、コーヒーは70を超える国と地域で栽培され、スターバックスはそのうち30か国以上からコーヒーを購買。世界で2千500万人とされる生産者のうち45万人と取引する。

「世界のコーヒーの5%程度を扱い、世界3万店舗以上でお客様をお迎えするわれわれのビジネスは生産者の努力があってこそ成り立つ」と感謝の意を表するのは、スターバックスコーヒージャパンでコーヒースペシャリストとして活動する渡邊績さん。1月25日に開催されたメディア向け勉強会で、コーヒー生産者の実態とスターバックスの支援活動について説明した。

コーヒースペシャリストとして活動する渡邊績さん(スターバックスコーヒージャパン) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
コーヒースペシャリストとして活動する渡邊績さん(スターバックスコーヒージャパン)

スターバックスが取引する生産者は12 ha以下の小規模生産者が90%以上を占める。「1haはサッカーコートに相当(0.75ha)する。1haで1年間栽培されるコーヒーの量は、産地ごとの生産性にもよるが、スターバックスと取引のある生産国では焙煎したスターバックスのコーヒー約200袋に相当する」という。

小規模生産者は収量が限られる上に、消費国に届くまでに多くのステップが介在するケースがほとんどのため、不利な立場に置かれることが多くさまざまな経済的課題に直面している。

その一つが次の収穫前の現金不足で「少しでも早く現金を手にしたいということで未熟なコーヒーチェリーを摘んでしまい、その結果、質の低いチェリーを安価で売り渡すことになり収入も減ってしまう」。この課題に対し、スターバックスは「Global Farmer Fund(グローバルファーマーファンド)」プログラムで対応。「インフラ設備への投資や、低金利で融資するサポートも昔から行っている」。

支援された給水設備 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
支援された給水設備

アクセスの課題にも対応する。小規模生産者の多くは奥深い農村地域で生活しているため、インフラ投資のための必要な資金を確保することが困難となる。「ランニングコスト以外に、品質を向上させるために必要な投資や気候変動対策として新しい苗木にトライするための投資をしていかないと、持続的な経済的自立にはつながっていかない」と述べる。

経済的な課題に加えて、各国の労働・生活環境にひもづく社会的な課題も存在する。「社会的課題は、生産国や地域によって多種多様だが、教育機会や医療・清潔な水といった保健衛生へのアクセスといった生活インフラに関わるものが挙げられるほか、最低賃金を下回る報酬・強制労働・非人道的な扱いといった季節労働者の労働環境に関わる課題も一部の地域で見られる」。

「サイレンブレンド」(スターバックス) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
「サイレンブレンド」(スターバックス)

スターバックスでは2004年に品質基準・経済的な透明性・社会的責任・環境面でのリーダーシップの4つの柱からなる「C.A.F.E.プラクティス」という独自の購買ガイドラインを導入し基準を満たした生産者から優先して購買を行っている。

具体的には「チェックというよりは、改善につなげるための取り組みをともに考え実施している。輸出業者・協同組合・NGOとの連携を強めて、給水設備をつくったりクリニック開設のための助成金を支援したりと個別・具体的なサポートに取り組んでいる」。この取り組みの成果は収量アップという形で現れ「C.A.F.E.プラクティス」に参加した生産者の収入は平均して4割向上しているという。

スターバックスコーヒージャパンは、生産者を含めコーヒービジネスを取り巻く女性たちを祝福するため3月8日の国際女性デーに寄せた活動を計画している。

今年、初の試みとして、3月8日は全国の店舗で日替わりコーヒーが「サイレンブレンド」になりSNSなどを通じてコーヒービジネスを取り巻く女性たちのストーリーを発信する。「サイレンブレンド」はスターバックスが長年支援活動を続けている東アフリカとラテンアメリカの2つの生産地域のコーヒー豆をブレンドしたもので、19年に開発され日本でも20年に販売開始された。「サイレンはスターバックスのロゴに描かれた二股の人魚で、ブランドを象徴する女性像。その名を冠したコーヒーに、すべての女性への敬意を込めた」と説明する。

洗浄した生豆を運ぶルワンダの生産者 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
洗浄した生豆を運ぶルワンダの生産者

スターバックスは04年から東アフリカの生産国・ルワンダのコーヒーを購買し、09年には農学者や環境のプロフェッショナルが常駐するファーマーサポートセンターをルワンダ国内に開設し生産者をサポートしている。ルワンダは1994年4~7月の間に、民族間での大虐殺で国民100万人が命を落としたとされる。内戦終結後、農業改革やインフラ整備、海外からの投資奨励などで急速な経済成長を遂げ、国の復興においては女性の活躍が大きな役割を果たす。コーヒー栽培も同様で女性が活躍。「ジェノサイドで90年代後半には生産量が一度ゼロになったことがあった。2000年ごろから国が農業に関する改革を行い、そこに輸出業者も関わり一体となって取り組んだ」という。

今後は、持続可能なコーヒーの生産を目指した活動のもう一つの柱である気候変動対応にも取り組む。「コスタリカの自社農園で気候変動にも耐えうる品種の開発に取り組んでいる。その品種を取引のある農家だけではなく、コーヒー業界全体に伝えていくことを含めて重視すべき取り組みであると理解している」と語る。