レモン果汁を「生活に欠かせない」定番調味料に 「ポッカレモン」の生産能力増強 2030年までに総需要2倍 ポッカサッポロ

 ポッカサッポロフード&ビバレッジは、レモン果汁市場で8割強のトップシェアを握る「ポッカレモン」ブランドが牽引役となりレモン果汁の常備率をマヨネーズやケチャップなどの定番調味料と並ぶレベルに引き上げていく。

 インテージSCRによると、レモン果汁の常備率は21年に20%。これを26年までに25%へ引き上げ30%強の食酢に迫るようにし、将来はマヨネーズやケチャップと並ぶ60%強を目指していく。

 「ポッカレモン」は今年発売65周年を迎え、同社は22年を次の65年に向けての“始まりの1年”と位置づける。

16日名古屋工場で発表した大槻洋揮氏(中央)、山口研志氏(右)、本谷宜久氏(左)、櫻井大也氏(前列右)、高瀬めぐみ氏(前列左) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
16日名古屋工場で発表した大槻洋揮氏(中央)、山口研志氏(右)、本谷宜久氏(左)、櫻井大也氏(前列右)、高瀬めぐみ氏(前列左)

 16日、ブランド誕生の地と縁のある名古屋工場で発表した大槻洋揮取締役執行役員レモン・プランツミルク事業本部長は「常備率を高めて使用頻度と使用量を増やすという掛け算で中期目標であるレモン総需要2倍を30年までに実現したい。次の65年には“さしすせそ”と言われる基礎調味料、さらにはケチャップやマヨネーズと伍するような常備率を目指したい」と意欲をのぞかせる。

 事業としては、現在320億円あるオールレモン事業を「次の65年には最低でも1000億円にしたいというのが私の野望」と述べる。

 このビジョン達成のための柱は(1)安全安心なものを安定供給するための生産設備の拡充(2)使用・摂取の機会拡大(3)啓発・食育活動――の3つ。

 安定供給に向けては10億円を投じて主力商品「ポッカレモン100」(70ml)の生産能力を20年比3倍に増強する。

 これは、20年の需要急増を受けて生産能力を20年比1.5倍に引き上げた昨年の5億円の投資に続くもので23年春をめどに完了する。
「21年は人のシフトとラインの改造で瞬発力を高める投資を行った。今回の投資は、充填スピードを速くするという根本的なもので、新ラインを立ち上げる規模の投資になる」と説明する。

左から「ポッカレモン100」(70ml)と開栓後の常温保存を可能にした新商品「卓上レモン」(70ml)と「すだち果汁100%」(70ml) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
左から「ポッカレモン100」(70ml)と開栓後の常温保存を可能にした新商品「卓上レモン」(70ml)と「すだち果汁100%」(70ml)

 機会拡大にあたっては、変化する社会ニーズに対応すべく新商品を順次投入していく。

 ただし「商品数を増やすことによって売上を伸ばすというよりは、お客様の生活に欠かせない存在になることを実現させたい。新商品も出していくが、ベースとなるのは『ポッカレモン』の基幹商品で、その使用頻度をいかに増やしていくかがポイントとなる」。

 中核アイテムは「ポッカレモン100」(70ml)。

 「実は当社の全商品の中で一番並んでいる商品で、一世帯当たりの人数が減っていく中で小容量が伸びていくであろうし、大容量へのエントリー商品の役割も担っている。70mlはお客様の数を増やしていく成長のトリガーになる商品」と位置付けている。

 スーパー・量販店では生鮮3品との露出を強化する。

 「主具材の価値をレモンによって引き立てるところが大事なポイントで、コロナ禍で試食販売が困難な環境ではあるが、ここについては一層推進していく」という。

 レモンから柑橘類への領域拡大も図っていく。

 今年、同商品で使用している70mlプラスチック製容器で徳島県産果汁を100%使用した保存料無添加の「すだち果汁100%」を2月21日に新発売する。

 「日本は柑橘を食酢代わりに使う文化がある。特に西日本では色濃く、柚子、すだち、かぼすなどが使われている。今回、すだちの新商品を出すが、グループ会社のある沖縄にはシークワーサーがあり、こういったところにもウイングを広げていきたい」と語る。

 啓発・食育活動は、社内外にレモンの価値を伝える役割に担う専門チームとしてレモンアンバサダーを新設。

 社外へはプロゴルファーの稲見萌寧選手、プロ野球の杉谷拳士選手、陸上競技の寺田明日香選手のトップアスリートと組み、クエン酸による健康価値訴求に注力していく。

 未来に向けては不易流行を重視。

 「ポッカレモン」の生みの親は故・谷田利景氏。1957年に瓶入りレモンを開発しニッカレモンを創業した。

 「谷田氏32歳のときに、アメリカでは女性がイキイキと活躍し必ず日本もそういう社会がくると信じて創業し、女性が幸せな社会生活を過ごしていただきたいという想いでずっと『ポッカレモン』は歩んできた。今後も女性がメインターゲットになるが、市場のパイを広げていくためオールターゲット・オールオケージョンで臨む。高齢化社会に向けてQOL向上にも貢献していきたい」と述べる。

 ロングセラーブランドの持続的な成長の秘訣については、“新しいことを変わらぬ気持ちで、変わらぬことを新しい気持ちで”の言葉に集約されるという。

 「新商品に対しては“女性が活躍する幸せな世界をつくりたい”という変わらぬ気持ちで臨み、ブランドに対しては新しい気持ちで社会や生活者の変化に対応する。お客様と対話しチューニングしながらブランドを介して心地よいハーモニーを奏でていくことがロングセラーブランドの持続的な成長に向けて不可欠」との見方を示す。

 16日、名古屋工場で開かれた発表会では、レモン・プランツミルク事業本部レモン・プランツミルク研究所オールレモン開発グループリーダーの山口研志氏が「ポッカレモン」のこだわりの品質について、同事業本部事業企画部オールレモングループ本谷宜久氏が価値発信強化に向けた新しい取り組みについて説明した。

 若手社員による未来に向けた宣言も行われ、生産本部名古屋工場製造1課の櫻井大也氏が「世界中で『ポッカレモン』が楽しまれる」ことを、レモン・プランツミルク事業本部レモン・プランツミルク研究所オールレモン開発グループの高瀬めぐみ氏が「世界からもご指名いただける商品を育てる」ことをそれぞれ目標に掲げた。